書評

貧乏モーツァルトと金持ちプッチーニ

1.今日の一言と紹介する本

モーツァルトは知っていても、プッチーニのことを知っている人は多くないのではないでしょうか?

実は僕は高校時代に合唱部をやっていましたが、それでもプッチーニの存在は聞いたことがあってもあまりよく知りませんでした。
プッチーニはモーツアルトと同じように音楽家でありましたが、なんとモーツァルトよりもはるかに大きな財をなしえた存在です。

なぜそんなことができたのか?

その答えは知財のマネタイズにあったようです。
今日は知財がどのようにマネタイズされるのかということを紹介した、

貧乏モーツァルトと金持ちプッチーニ』をご紹介していきます。

2.本のサマリー

正林真之さんは特許、商標を企業イノベーションに活用する知財経営コンサルティングの実績が国内外1400件以上という弁理士の方。
幼少の頃から音楽に触れ、モーツァルトとプッチーニと言う2人の人生が経済的に全く異なる結果になっていることの疑問をまとめた一冊。

結論から言えばモーツァルトは、完成した作品を切り売りしたのに対し、プッチーニは大手企業と組み権利を保持しながらマネタイズしたことによって大きく成功しています。

なぜ銀座のママでも美人ママと言うのは成功しないと言われているのか?
マクドナルドはハンバーガーではなく権利で儲けている?
コカコーラはなぜレシピの特許を取っていないのか?
知財における日本が今すべき対策とは?

など、知財に関わる知識を幅広く得ることができる素晴らしい1冊でした。

特に心に残った3点をご紹介していきます。

3.ポイント3点

天才が成功するのではなく、成功の仕方を知る人間が天才になる

ピカソは、優れた芸術家は模倣し、偉大な芸術家は盗むと言った。
だから僕たちは、偉大なアイデアを盗むことに関して、恥じる事はなかったと語ったのは、ほかならぬスティーブジョブズだったのだ。

長所を見抜く能力と言うのは、誰にとっても、訓練することによってのみ得られる後天的な才なのである。

4.岡崎の考察

実はコカコーラの原液は特許を取られていない!?
この事実は皆さんご存知でしたか?
コカコーラ社は特許をとってしまうとその製法、レシピを全てオープンにしなくてはならないためあえて特許を取らないと言う道を選択しています。
こういった戦略をクローズ戦略と言うそうです。

本書の面白さは、具体的な事例がたくさん散りばめられており楽しみながら知財について学んでいけることでしょう。

他にもピカソは絵を書くだけではなくビジネスの天才でもあったと言うことが驚きでした。自分の書いた絵の優先販売権を設け、その権利で儲けていたり、自分のサインが売れることを知っていて、小額でもあえて小切手をきり請求が来ないようにしたり、と普通では考えないようなアイデアを実行していたそうです。
自分のアイデアや技術をどのように守っていくのかと言う事は疎遠な話ではなく身近な話かもしれません。

余談ですが会社員の友人で商標をとり忘れたせいで、後発の参入に市場を持ってかれ、社内で大変問題になったと言う友人もいます。

皆さんも思っているほど他人事では無いかも?
もちろん知財や利権に興味がなくても、え!そうだったの?
と周りをびっくりさせるネタを仕入れることができるでしょう。

知的に自分を演出するために押さえておいて損は無い一冊だと思います。

5.気になるワード

天才が成功するのではなく、成功の仕方を知る人間が天才になる
もしモーツァルトが権利で儲けることを考えていたのであれば、それこそ、どんな使い方をしても使い切ることができないような莫大な財をなしていたに違いない。
長所と言うものは、短所の裏返しなのだ
ずば抜けた才能はなくても、優雅な一生をおくったプッチーニ
モーツアルトがフリーランスの作曲家ならば、プッチーニは組織とうまく契約を結んだ作曲家である。
才能と成功は、同じ次元では存在しない。
ある分野での天才性が、そのまま経済での成功に直結しない
モーツアルトのような曲の売り切りをしていくフロービジネスではなく、大きな企業に依存し、権利を活用するストックビジネスに切り替えた。
ピカソは、自ら様々な権利を喪失していた。
例えば1枚の絵画が完成したときに、それを優先的に購入できる優先購入権のような類の権利である。
これは、ピカソのファンクラブに入ることで、優先的にピカソの作品を購入できるという特権をマネタイズしたものだ。
さらに驚くべきこととして、ピカソは買い物をしたときにたとえ小額であってもわざわざ小切手を切ったと言う。
ピカソのサインが記された小切手は、その額面をはるかに超える価値で売買されるため、監禁されることもなく、当然の結果ながらピカソ自身がその小切手の額を負担することはほとんどなかったと言うのだ。
人生の差は才能の差だけではない
人はブランドを愛し、商標にお金を払っている
マクドナルドと言う会社の正体は、ハンバーガーを始めとする商品を売って儲けるファーストフードカンパニーではなく、フランチャイズ店との店舗賃貸契約料をその収入源とする不動産カンパニーとも言えるのだ。
コカコーラ社は原液の売り上げでは儲けず、商標使用料で売り上げを立て設けているのである。
コカコーラの現役のレシピは特許で守られていない
特許権を得た発明は、20年間は独占できるが、特許はいちど出演してしまうと、その特許が認められようが認められまいが、出願内容が公表されてしまう。
コカコーラ社ではあえて特許はとらず、門外不出の秘伝のレシピを誰にも明かさないことを徹底している。
知財の世界には、オープン&クローズ戦略というものがある。
オープン戦略で他社の市場参入を誘導し、クローズ戦略では、自社が独占したい肝心要の技術を出さず、その技術で自社商品を際立たせて、他社商品と差別化を図り、自社の利益を拡大していくと言うのがこの戦略の狙いである。
特許の魔物を意味するこのパンテトロールの存在こそ、今後日本の企業が最も警戒すべき存在である
パンテトロール自体は、その特許を実施する意思、能力、施設は持たず、あくまで高額の損害賠償、和解金が狙いとなる。
知的財産権をマネタイズするためには、どうしたらマネタイズできるか、それを誰よりも真剣にそして戦略的に考えて、行動する、そんな組織作りが欠かせない
ピカソは、優れた芸術家は模倣し、偉大な芸術家は盗むと言った。
だから僕たちは、偉大なアイデアを盗むことに関して、恥じる事はなかったと語ったのは、ほかならぬスティーブジョブズだったのだ。
知財について考えるとき私たちは常に独創と言う哲学を忘れてはならない。けれど、その独創とは、決して何もないところから偶然の産物として生まれるものではないことも忘れてはならないのだ。
全国で1番人気がない、と言うキャッチフレーズは、中途半端な順位よりもむしろアピールポイントになるかもしれない。
海外企業の利用を認めたことで、くまもんは世界中で知らない人がいなくなるほどのワールドワイドなキャラクターへと成長していく可能性もある。
希少性という言葉をご存知だろうか。
人間には手に入りにくくなるとその機会がより貴重なものに見えてくると言う傾向がある。
ブランドの力、すなわち商標が秘めた商品の魅力付けの力だ。
有田みかんと名乗ることで金持ちプッチーニになれた有田のみかん。
しかし、素晴らしい品質を誇りながら、国内消費量の急激な伸びに比べて生産量が物足りない国産オリーブのような例もある。
そのネーミングから、夜のお菓子と言うキャッチフレーズまで、その完璧なまでのプロモーションストーリーを守っているのは、ほかならぬ『うなぎパイ』の商標登録である
小がまとまることで権利を利権に変えられる
小がまとまるためには、そのまとめ役が欠かせない。反対に、まとめ役がいさいすれば小は小さいで終わることなく、より大きな権利を自らのものにでき、その権利を集め、まとまった小で分配できるのだ。
わが国日本に足りないのは、商標となるべきテーマではなく、このまとめ役かもしれない。
学歴をプッチーニのように有効に活かしたければどうすれば良いのか?
東大と言うブランドを活かしたかったら、東大生が圧倒的に少ない場所、例えば、中小企業などに就職した方が大切にされる
大切なのは教育を終えた後、学んだことをどう活かしてマネタイズしていくか、いかに自分の人生を自分の行きたい方向にもっていくかということである。
マネタイズする上で最も貢献しているものは何かといえば、目に見えない才能と言う資産なのである。
我々日本人も、同じく知的民族であると言っても過言ではないと思うが、物質的なものにばかり気をとられていて、持てる資産を活かしきれていないように思う。
企業の経営資源を分析するために使われるブイアールアイオー分析のフレームワークは、value(価値)、rarity(希少性)、imitability(模倣困難性)、Organization(組織性)、に区分され、競争優位性の把握ができる。
知財と言う見えない資産の活用法に気づくことができれば、新たな売り上げを上げることができ、新しいビジネスモデルを発見でき、ファイナンスに成功したのと同じ効果が期待できる。
良いスタッフ、良いお客様、良いバス新事務所、この三要素を揃えることができれば、誰でも成功できる
すべては人材から始まる。
人間と言うのは、欠陥があると命に関わることもあるため、短所を見つけるのが得意なようになっている。そのため、短所を見て、長所を見ようとしない習慣がついており、長所を見つける力が弱い。
長所を見抜く能力と言うのは、誰にとっても、訓練することによってのみ得られる後天的な才なのである。

6.商品の紹介