書評

ローマ法王に米を食べさせた男

1.今日の一言と本のサマリー

最近の会社員、特に大企業に勤めている人は、公務員化している…

いざ新しいプロジェクトを始めようとすると、失敗することを恐れてはじめの1歩が踏み出せない。前例ばかりに縛られてアイディアも出てこない。そして、何より誰も責任を取りたがらない…そのくせ会議は何回も何十回も開き、分厚い立派な企画書を作りたがる。

実際に動き出すのはいつなんでしょうか?誰なのでしょうか?そんな公務員のような会社員が増えている中、起業家のような公務員の方の1冊が本書です。

過疎の村を救ったスーパー公務員、高野先生。過疎高齢化集落の活性化と農作物のブランド化を依頼され、それを成し遂げ、ローマ法王に米を献上することに成功しています。

問題解決の仕方、発想力の付け方を養うことができる本書。ご紹介していきます。

2.ポイント3点

できないと人が諦めていることをやるのが楽しいんです。

1%でも可能性があるなら、徹底的にやってみようよ。

最大の悪作は、やりもしないうちから、絶対できないと思い込むことなんです。

3.岡崎の考察

舞台となるのは神子原地区。いわゆる限界集落です。限界集落とは、このまま何もせず時間が過ぎていくと刻一刻と人口が減り、最終的にはなくなってしまう村という意味です。そんな神子原地区を救った高野先生。どんな取り組みをしたのか、ご紹介していきましょう。

①人体政治学、人体経済学をもとに考える
村を人間に例えて考えて見るという作業もしました。社会を構成する最小単位は人間です。人間が集まって、家庭を築きます。家になります。家が集まって、村や集落になります。このように一人ひとりの集まりによって村や町が出来上がっていく。
人間の体の中もこれと同じように小さなものが重なり合って全体を構成しています。だから、人間の体の中で起こる事は、村でも起こるといいます。

例えば20年位の間に異常にやせ細ってしまった村。これを自分の左腕だと考えましょう。やせ細ってしまったから切ってしまえ!となるでしょうか?

病気が発生していて切らざるを得ないならしょうがないでしょうが、おそらくこの判断は最終手段です。また血液を貨幣と考えてみれば、貨幣が少なくなる、すなわち血液が少なくなれば体温が下がったり、生きていく上での重要な機能が損われる事は当然です。このように組織や地域社会を人に例えて考える哲学を、人体政治学、人体経済学といいます。組織を1つの体と見て考え、状況を整理すると良いでしょう。

②予算60万円で農村集落活性化
地域活性化をするという大きなプロジェクト。通常であれば何度も会議をするものでしょうが、一切会議をやらず、企画書も作らず動き始めたといいます。
なぜか?それは足らないのは行動する力だから。手をこまねいて何もしなければ、村は自然消滅してしまう。一刻も早く動かなければならない。
そこであえて予算を60万円にすると決めます。当然上司からはそんな少ない予算でできるはずがないと意見されます。しかし少ない予算であれば面倒な手続きも少なくすぐ行動することができます。上司からも大丈夫なのか?と聞かれても大丈夫です!と答えて背水の陣を作る。火事場の馬鹿力が出る状況を作って、できるかできないかではなく、やるしかない状況で仕事をするのも1つの手でしょう。

③味方を作る
何しろすぐに手をうたなければならない状況の中、場合によってはルールを無視した仕事のやり方をする必要すらあります。そんな波風立つ仕事をする上で必要だったというのが理解者の存在です。当時の課長が次のように言ってくれたそうです。

犯罪以外は全部責任を取る」この一言に燃え、絶対にこの人に恥をかかせてはいけないと思って、腹をくくって仕事ができたといいます。責任者のあるべき姿は、全部責任を取る、という姿勢でしょう。

④弱みを武器にする
神子原には食堂や喫茶店がありませんでした。コンビニももちろんない。そんな場所に農家カフェをつくります。さて経営者として当然ですが、農家カフェを多くの人に知ってもらいたい。そのために車が通る街道の脇に店の看板を置こうとします。それに対し高野先生は次のように話をします。

「絶対、それはやめたほうがいい」
「えっ、なんでですか?それじゃあお客さんがどうやって店に行けばいいかがわからないじゃないですか」
「そこがいいんだよ」
「いや、ここは携帯がつながらないし、電話して場所を聞こうにもできないんですよ。看板がなかったら最悪ですよ」
「どうして最悪と見るの?最高じゃん。だって都会の喧騒を離れてこんな静寂なところでご飯食べられるのはいいじゃない。だから武藤君もここで店を開くんでしょ?」

半信半疑ながらにそれを信じ開店。結果的に大繁盛することになります。弱みも使い方次第では強みになりますね。

⑤ブランド米を作る
きれいな山の水で作られた神子原のコシヒカリ。しかしこれを通常の流通経路に乗せてしまうと、ただのコシヒカリとして扱われます。高値で売ることができません。そこで目をつけたのがロンギング。ロンギングとは憧れ、切望という意味です。すなわち、有名人が持っている者に憧れ、切望し購入する現象。
憧れられる米にするために、有名人に食べてもらうという作戦です。そこで天皇皇后両陛下の現状を考えましたが、残念ながら却下。そこで考えたのがローマ法王。神子原を英語に訳すとサン・オブ・ゴッド。すなわち神の子、イエス・キリスト!待つこと数ヶ月、、、なんと採用された旨が届きます!
ほとんどの人はできないとあきらめてしまうところでしょう。可能性の無視は、最大の悪作なのです。

凝り固まった頭を柔軟にしてくれる1冊。お勧めです。

4.気になるワード

戦後の日本には哲学がありました。
限界集落にはマイナス面だけでなくプラス面もあるはず
会議はやらない。企画書も作らない
できないと人が諦めていることをやるのが楽しいんです。
従前の裁量権を持った人たちの判断が正しかったら、集落は後は疲弊していないはず
仕事のルールを無視するやり方を敢行するには、役所内で市長以外にも理解者が必要でした
内側の人間は近い人間の悪いところしか見ていない
良いところはなかなか見ようとしない
売りたいときに売れないのが、売る方法
売れているのだから、量をもっと増やせ。という人もいるけれど、あえて少量しか売れなかった。希少価値がある方が、ブランドとしてのありがたみが出るからです。
やってみせて、やらせてもらって、納得させないと人は動かない
赤字、いいじゃないですか。失敗、どんどんしましょうよ。そうやって自活自立していきましょうよ。
1%でも可能性があるなら、徹底的にやってみようよ。
最大の悪策は、やりもしないうちから、絶対できないと思い込むことなんです。
人間というのは、非常に狭い経験や知識で物事を判断してしまう。

5.商品の紹介