書評

相手に響く伝え方 人生を変える心理スキル99

1.今日の一言と本のサマリー

次の質問について考えてみてください。

あなたの街で、600人を死に追いやると予想される特殊な病気が発生したとします。この病気を治すためにAとB、2つの対策が準備されました。

A … 200人が救われる
B … 3分の1の確率で600人が救われるのに対して、3分の2の確率で誰も救われない
さて、どちらを選びますか?

それでは同じ状況で、次の2つの対策ならどちらを選ぶでしょうか?
C … 400人が死亡する
D … 3分の1の確率で誰も死なないのに対して、3分の2の確率で600人が死亡する

よくよく読んでみるとどちらも同じことを言っていますが、AとBならAを選ぶ確率が70%。CとDなら80%の人がDを選ぶという結果が出ています。

これは、行動経済学でノーベル経済学賞受賞したダニエルカーネマンエイモストベルスキーが1981年に行った実験結果です。意思決定する際、情報の意味する内容が同じであっても、その問題をどう捉えさせるかによって結果が異なる現象をフレーミング効果といいます。

ちょっとした言い方で人の選択は大きく変わってしまう。そんな心理学を活用したコミュニケーション本をご紹介します。

2.ポイント3点

心理テクニックを効果的に使いたいなら、相手を主体に置く事が絶対条件

人前で宣言した言葉は深く内在化され、それが自分の意識を変え、すると行動が変わり、実現されていく

感情や思考を包み隠さず書き記すと、ストレスが軽減される

3.岡崎の考察

99の心理テクニックを1つずつ解説した本書。具体的な事例が多く内容は多いものの飽きずに最後まで読めました。この中でも特に印象的だった心理スキルをご紹介する形で書評としたいと思います。

①人はボディータッチに弱い
ボディータッチは、原体験の1つ。赤ちゃんの頃からボディータッチされることで心地よさを感じているため、大人になってもボディータッチが心地良いと感じてしまうといいます。特に人の場合、信頼した相手は心を許した相手には無意識的にボディータッチを許します。相手に嫌がられない程度、例えば軽く肩をポンポンと叩くなどのボディータッチは心理的な距離を縮めるために非常に有効。セクハラに認定されない範囲で、上手に活用できると良いですね。

②エスカレーター効果
止まっているエスカレーターを登ろうとする時妙に体が重く感じる事はありませんか?これはエスカレーターは自動で動いているものという思い込みがあるため、脳の運動を司る部分が、動くエスカレーターに乗るようにするときの微妙なバランス調整を再現してしまうからだそうです。このように、無意識に信じてしまっている思い込みに反する時に起こる違和感のことを、エスカレーター効果と呼びます。
ビジネスシーンでも、自分自身が勝手に思い込んでしまっている事はないか?と自問する事が大切ですね。

③負け犬アピール
判官贔屓という言葉があります。これは、不遇な身の上の人や弱い立場に置かれているものに対してかと思ったり同情を寄せてしまうことを指します。ハーバード大学は次のような実験を行いました。2つの架空の会社を設定し、学生はどちらの会社から商品を買いたいのかをアンケート。

A…情熱を持っているのに業績が悪い会社
B…何の経営努力もしていないのに業績が良い会社

結果的にほとんどの学生が、、Aから商品を購入したいと答えたそうです。あえて自分の弱い一面や、負け顔見せることで応援されやすい自分を演出することができます。たまには弱い自分を出してみてはいかがですか?

④提案話法
子供の頃に、親から、遊んでばかりいないで早く宿題やりなさいよ!と言われて、絶対にやるもんか!と反発を感じた事はないですか?
この心の動きをブーメラン効果といいます。相手を説得しようと頑張れば頑張るほど、相手の心が反対方向に頑なになるという心理メカニズムです。説得すればするほど説得されないように頑張ってしまう。だから、説得したいと心が動いた時ほど、説得しないことを心がけることが大事でしょう。

⑤買った後で後悔したくないという相手の心理的な壁を回避する方法
何かを購入する時、自分に合わなかったらどうしよう、もっといいものがあったらどうしようなどと考え、購入を躊躇した経験はありませんか?この店で買った後に後悔することを恐れる心理状態を、行動心理学ではマッチングリスク意識と呼びます。

マッチングリスク意識を回避するには次の3つの方法が有効です。
1、返金保証、返品保証
2、試供品、無料お試しサービス
3、第三者のレビュー

何かサービスを提供するのであれば、特に高額であればあるほどこれらの対策をとると良いでしょう。仕事にも、プライベートにも生かせるテクニックが満載。心理学的な様々な事例を知りたいという方にお勧めできる1冊でした。

4.気になるワード

人の印象は、初対面の場合は7秒で決まる
心理テクニックを効果的に使いたいなら、相手を主体に置く事が絶対条件
人に好印象を与えたいなら顎を気持ち上に向けておくことを意識してみましょう
人は違う情報源から多くの情報与えられると、最後に得た情報に影響を受けやすい
去り際の印象を良くすることで、印象は書き換えられる。ただし、良い印象は、相手の予想上回るコードでないと生まれません
人は無意識にバランスのとれた状態を目指す
好きな人の好きなものは好きになりたい
飲食をしながら交渉すると、ポジティブな結論に結びつきやすい
相槌はコミュニケーションにおける最強の武器
私たちのコミニケーションは言葉そのものよりも言葉以外のものから伝わる部分の方が大きい
よくしてもらったと感じた場合は、その人物への好き嫌いにかかわらず借りを返さなければという心理が働く
マイノリティーが一貫して強い主張を持ち続けることで、マジョリティーに影響を与えることができる
自分の言いたいことではなく、相手にとってのメリットを中心に話す
時間が経つとメッセージだけが頭に残る
なかなか手に入らないものだからこそ人は欲しくなる
理由があるだけで人はお願いを聞いてしまう
少々ハードルの高いお願いする場合には、根拠のしっかりした理由を加えないと効果がない
分からないのに分かった気になるのは本当に危険
人が行動する動機は、問題解決が望む未来像しかありません。
人を行動に駆り立てるのは、数字ではなくイメージです
持っているものを手放す事は、痛みや不快感だと脳の中で変換されてしまう
自分の所有物になったものに対して、高い価値を感じて手放せなくなってしまう
新しいことをやるのが怖いのは自分が弱いからじゃない
緊張やストレスの度合いが適切であればパフォーマンスが向上する
最高のパフォーマンスをするためにはある程度のストレスが必要
感情や思考を包み隠さず書き記すと、ストレスが軽減される
人は基本的に注目を集めたり、人から期待されたりすることが大好き。ですから、そんな環境に置かれるとモチベーションが上がるのです
人はコールド状態(落ち着いて理性的な状態)で何かを決意しても、ホット状態(怒ったり興奮したりしている状態)になるとその気持ちを忘れ、自分を利することができなくなってしまう
90分に1度、リラックスタイムを持とう
人前で宣言した言葉は深く内在化され、それが自分の意識を変え、すると行動が変わり、実現されていく

5.商品の紹介