書評

ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

1.今日の一言と紹介する本

前々から騒がれているティール組織。皆さんご存知ですか?

ティール(進化型)の組織体系として話題になり、採用したいと考えている企業も多いのではないでしょうか。

要は階層なくして、平等にすればいいんでしょ…といった形で表面上だけを知って話をしてしまうと、恥をかくことになりますから、ある程度内容を理解しておいて損はないと思います。

ただ今日ご紹介する書籍「ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現」は完全に辞書です。なので本格的に知りたいと思う方は書籍を購入することを強くお勧めします。それでは今日の書評をしていきましょう。

2.本のサマリー

次の組織モデルがこれだ!上下関係も、売り上げ目標も、予算もない!従来のアプローチの限界を突破し、圧倒的な成果を上げる組織が世界中で現れている!

組織が内部の問題を解決しようとする様々な方法は、状況を好転させるのではなく、悪化させることが多い。ほとんどの組織は、事業の変更、合併、集中化、分散化、ITシステム導入、ミッションステートメントの作り直しや評価報酬システムの再構築を何度も経験しているが、こうした従来の処方箋は、一部の問題解決にしか役に立っていない。つまり現在の組織モデルでは既に限界が来ているのだ。

そんな中、パイオニア組織は、これらの問題を解決し、目覚ましい業績を上げている。膨大な事例研究から導かれた新たな経営手法の秘密とは?

3.岡崎の考察

全589ページ…もう論文です(笑)

新しい組織を作ったり、現在の組織モデルに限界を感じている方は気合を入れて書籍を読んでみてください。

いつもはポイントを抜き出したり、線を引いた箇所を書き出したりしていますが、前後関係がわからないと、読み違えてしまいそうな内容なので今日は書評のみという形でご紹介していきたいと思います。

そもそもティール組織とはなんだ?
ティール(進化型)組織とは、生命体型組織をいいます。つまり、自主経営(セルフマネジメント)、全体性(ホールです)、存在目的を重視する組織体系となります。上下関係がなく、売り上げ目標や予算もないことが特徴となります。

自主経営(セルフマネジメント)とは?
階層やコンセンサスに頼ることなく、同僚との関係性の中で動くシステム。
つまり各仕事のグループごとに自ら目標設定をし、その達成のための創意工夫をしていく。そしてその意思決定には全員が関わり、その責任も全員がとっていく。管理者という概念がなく、全員がリーダーとして、自主性を持って動くことを求める経営方法。

全体性(ホールネス)とは?
誰もが本来の自分で職場に来ることができ、同僚、組織、社会との一体感を持てるような風土や慣行がある状態を指します。
例えば、家族の前にいる自分と、仕事をしているときの自分が違う顔をしているのであれば全体性があるとは言えません。家族といる時も、仕事をしている時も、1人の時も、共通する自分でいれる状態のことを指します。

いつでもどこでも自分らしくいられるという観点で、非常に充実度が高い状態と言えるでしょう。どのように、自主経営(セルフマネジメント)や、全体性(ホールネス)を実現していくのか?

大きく3つのステップが重要だといえます。

①存在目的の共有
組織自体が何のために存在し、将来どの方向に向かっていくのかを常に追求し続け、そしてその存在目的に合わせた人たちで組織が構築されていること。能力よりもその存在目的に共感した人たちが集まっていることが重要。

②善意を前提とした経営方針
従来型の組織では、人はサボるもの、ごまかすもの、嘘をつくもの、という前提を持って組織が作られています。だから管理し、監視するシステムを用いるわけです。
ティール組織においては、人は努力が好きで、常に正直であり、仲間のために全力を尽くすものであるという前提に立っています。だから中間管理職がなくとも組織が機能するとしています。

③管理職ではなく、コーチがいる。
当然ですがティール組織も好き勝手に行動して良いということでありません。しかし決裁権を持つ管理職もいません。ではどうするのか?
各分野における専門的な知識を持つ人たちがコーチとして相談を受け、アドバイスをします。コーチはあくまで相談を受けアドバイスをするだけで、決裁権は持ちません。最終的な決裁権はその案件を立案した本人にあります。
トップダウンで目標設定することなく、本人の意思により目標設定と、そのための行動計画が得られます。

自主経営(セルフマネジメント)への4つの誤解
上記のように記載をすると、いくつかの誤解が発生します。その代表的な例をこれからご紹介します。

①組織構造も、経営も、リーダーシップもない
ティール組織という考え方に触れたばかりの人は、セルフマネジメントとは組織から階層を取り払い、何でもかんでもコンセンサスに基づいて民主的に決めることだと思い込んでしまうことがあります。むしろこれはあまりにも単純化しすぎた誤解で、セルフマネジメントとは全く異なります。
これまでの階層関係が仲間同士のコミットメントに置き換わり、従来型のピラミッドという単一の雛形ではないが、それぞれの組織の事業環境に合うように様々な組織形態を採用しています。

②全員が平等
ティール組織の観点から見ると、正しい問いは、どうすれば全員が同等の権力を握れるか?ではありません。どうすれば全員が強くなれるか?です。
重要な事は、全員を平等にすることではなく、従業員それぞれが自分の領域の中で最も力強く、最も健康になる事を認めること。
支配者が君臨する階層的組織ではないが、人々の中で自発的に出来上がった階層が多数できることは許容しています。階層がない組織はよく「フラット化した」と呼ばれることが多いですが、これはティール組織には全く当てはまりません。

③要するに、権限委譲をすれば良いのでしょう?
権限の付与問題に応急処置をしているものではありません。親切心によって権限を委譲されているわけでもありません。ティール組織において重要な事は権限委譲ではなく、誰もが成長し、自分の考えや行動に全責任を大という姿勢を持つことです。

④まだ実験段階の組織形態だ
自主経営(セルフマネジメント)は、規模の大小によらず、様々な業種で既にその価値が証明されている方法です。本書で紹介された12の企業のほか、様々な業種業態で実践されているマネジメント手法です。

それじゃあこれをどうやって実践するのよ?というところまで書こうと思うと、とてもじゃないですが書評というレベルではなくなってしまいます(笑)

今後広がるのか、それとも廃れていくのか…どちらであれ、知っておいて損はない内容だと思います。

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