書評

ケーキの切れない非行少年たち

1.今日の一言と紹介する本

天才キッズクラブさんの見学会。

子供達の成長が著しく、とても感慨深いものになりました。

逆立ち歩きができなかった子供たちも、小学生になるまでには全員当たり前のように逆立ち歩き。子供たちに負けないくらい、大人も成長したいものですね。

それでは今日の書評『ケーキの切れない非行少年たち』をしていきましょう。

2.本のサマリー

反響続々!65万部突破!!児童精神科医である著者宮口幸治さんは、多くの非行少年たちと出会う中で、反省以前の子供がたくさんいると言う事実に気づく。

少年院には、認知力が弱く、ケーキを等分に切ることすらできない非行少年が大勢いた…

いじめ、性犯罪、殺人、児童虐待。

その背景にあるのは認知の歪みだ!そして問題の根深さは普通の学校でも同じ。人口の十数%いるとされる境界知能の人々に焦点を当て、困っている彼らを学校、社会生活で困らないように導く超実践的なメソッドとは!?

3.ポイント3点

本来は支援されないといけない障害を持った少年たちが、なぜこのような凶悪犯罪に手を染めることになったのかが問題

中学校で先生が障害に気づいてくれて、熱心に勉強への指導をしてくれていたら非行化しなかったでしょうし、被害者も生まれなかったのです。非行化を防ぐためにも、勉強への支援がとても大切

非行少年に共通する特徴
①認知機能の低さ…見たり聞いたり創造する力が弱い
②感情統制の弱さ…感情をコントロールするのが苦手。すぐにキレる
③融通の利かなさ…なんでも思いつきでやってしまう。予想外のことに弱い
④不適切な自己評価…自分の問題点がわからない。自信がありすぎる、なさすぎる
⑤対人スキルの乏しさ…人とのコミニケーションが苦手
+身体的不器用さ…力加減ができない、身体の使い方が不器用

4.岡崎の考察

ケーキを三等分できない…
図を同じように描くことができない…

認知能力が低いと、正確に情報をうけとることができず、それがきっかけでいじめに発展。さらにそこから非行、犯罪へと繋がってしまう。さらに認知能力と学校の成績は必ずしも連動せず、成績は良いけど認知能力が低い場合も。

知らないとつい、根性がないだけ、やる気がないだけ、と責めてしまいそうなケースも認知能力の低さに問題があるかも!?認知能力の低さがどんな現象を引き起こすか、とても考えさせられる内容でした。

幸い認知能力は下記のようなことをきっかけに向上するといいます。

①家族のありがたみ、苦しみを知った時
②被害者の視点に立てた時
③将来の目標が決まった時
④信頼できる人と出会えた時
⑤人と話す自信がついたとき
⑥勉強が分かった時
⑦大切な役割を任されたとき
⑧物事に集中できるようになった時
⑨最後まで諦めずにやろうと思った時
⑩集団生活の中で自分の姿に気がついたとき

また認知能力を上げるためにこのようなトレーニングが有効だといいます。

①適切な自己評価をする
なぜ彼らは適切な自己評価ができないのでしょうか?それは適切な自己評価は他者との適切な関係性の中でのみ育つからです。認知能力が低いと他者との関わりが薄くなります。まずは適切な自己評価をするサポートをしましょう。
学習面、身体面(運動面)、社会面(対人関係など)の3つ面からアプローチする必要があります。

②グループワーク
実際のアプローチの方法ですが、コグトレ(認知機能強化トレーニング)といわれるトレーニング方法があります。(※詳細を知りたい方はぜひ調べてみてください)

その中で私がお勧めしたいのはグループワークです。

子供の心の扉を開くには、子供自身がはっとする気づきの体験が最も大切であり、我々大人の役割は、説教や叱責などによって無理矢理扉を開けさせることではなく、子供自身にできるだけ多くの気づきの場を提供することです。

自分たちで話し合って、考える。

大人は気付くことのサポートに徹する。教えるのではなく気づきの場を作るというアプローチ。もちろん簡単なことではないですが、これって普段の仕事でもとても大事なことなんじゃないでしょうか。

人は教えてもらったことは忘れるもの。自分で気づいたものしか覚えていません。気づきの場を提供するって素敵なアプローチですね。

5.気になるワード

認知行動療法とは、思考の歪みを修正することで適切な行為、思考、感情を増やし、不適切な行為、思考、感情を減らすことや対人関係スキルの改善などを図る治療法の1つで、心理療法分野では効果的であるとされています。
考え方を変えることでより好ましい行動につなげていく
発達障害や知的障害を持った子供たちには、認知行動療法がベースとなったプログラムは効果が期待できない可能性がある
本来は支援されないといけない障害を持った少年たちが、なぜこのような凶悪犯罪に手を染めることになったのかが問題
犯罪によって被害者を作り、逮捕され、少年鑑別所に入って、そこで初めて障害があったのだと気づかれる
中学校で先生が障害に気づいてくれて、熱心に勉強への指導をしてくれていたら非行化しなかったでしょうし、被害者も生まれなかったのです。非行化を防ぐためにも、勉強への支援がとても大切
子供が少年院に行くという事はある意味、教育の敗北でもある
褒める教育だけでは問題は解決しない
苦手なことをそれ以上させないというのは、とても恐ろしいことです
問題が発生している場合の褒める教育は、問題の先送りにしかなりません。
朝の会の1日5分を使って様々なトレーニングをすれば、子供たちは十分に変わっていく可能性がある
凶悪犯罪に手を染めていた非行少年たちがケーキを切れない
私は驚きました。どうしてこんな簡単な問題ができないのか、どうしてベンツマークのように簡単に3等分できないのか。
後先のことを考える力は計画力であり、専門用語で、実行機能と呼ばれています。ここが弱いと、何でも思いつきで行動しているかのような状態になります。
世の中にはどうしてそんなバカなことをしたのかと思わざるを得ないような事件が多いですが、そこにも後先を考えず力の弱さが出ているのです。
非行少年に共通する特徴
①認知機能の低さ…見たり聞いたり創造する力が弱い
②感情統制の弱さ…感情をコントロールするのが苦手。すぐにキレる
③融通の利かなさ…なんでも思いつきでやってしまう。予想外のことに弱い
④不適切な自己評価…自分の問題点がわからない。自信がありすぎる、なさすぎる
⑤対人スキルの乏しさ…人とのコミニケーションが苦手
+身体的不器用さ…力加減ができない、身体の使い方が不器用
想像力が弱ければ努力できない
他人の努力が理解できないと、他人が努力してようやく原付バイクを手に入れたということにも思い足らないので、簡単に盗んでしまったりする
感情の中で最も厄介なのは、やはり怒りです。
非行少年のみならず、一般の学校の子供たちでも、対人トラブルの元になるのが、馬鹿にされたと自分の思い通りにならないといったものです。
自分に自信がないと自我がもろくて傷つきやすいので、また俺の失敗を指摘しやがってと攻撃的になったり、どうせ俺なんていつもダメだ…と過剰に卑下したりして、他人の言葉を好意的に受け取れない
怒りのもう一つの背景として、自分の思い通りにならないといったものもあります。これは相手の要求が強い、固定観念が多いといったことが根底にあります。
怒りは冷静な思考を止めます。カッとなると冷静な判断ができません。
融通のきかなさが被害感につながる
ある少年に不適切な誤りがあった場合、その少年がそれを直したいという気持ちを持つ際、まず自分の今の姿を知るといったプロセスが必要になります。自己の問題や課題に気づかせ、もっと良い自分になりたいといった気持ちを持たせることが、変化のための大きな動機付けになるのです。
ところが、もしここで、多くの問題や課題を抱える人が、自分には問題がない、自分は良い人間だと信じていて、自己の姿を適切に評価できていなければどうなるでしょうか?自己へのフィードバックが正しく行えず、自分を変えたいといった動機付けも生じないので、誤りを正せないばかりか対人関係においても様々な不適切な行動につながってしまうのです。
なぜ彼らは適切な自己評価ができないのでしょうか?それは適切な自評価は他者との適切な関係性の中でのみ育つからです。
認知機能の弱さが対人トラブルにつながることもあります。
非行に走る少年たちの中には、対人スキルが苦手な少年をよく見かけます。
クラスで下から5人の子供たちは、周囲から気づかれずに様々なSOSのサインを出している可能性がある
支援が必要なのに気づかれていない知的障害者がまだかなりの割合でいる
軽度の知的障害は、中等度や重度よりも支援をそれほどしなくても良いと言うわけではない
虐待してしまう親の特徴として一般的には、生真面目でこうあるべきといった固定観念が強い、自分の弱みを人に見せない、困っていることを人に相談できない、孤立している、対人関係が苦手、経済的な困窮もある、などがあると言われています。これらの特徴を見て何か気づかれないでしょうか?まさに、軽度知的障害や境界知能の人たちの特徴ととてもよく似ているのです。
障害者の心は、ガラスのようにとても繊細です。
褒める教育だけでは問題は解決しない
褒める、話を聞いてあげるのは、その場を繕うには良いのですが、長い目で見た場合、根本的解決策ではないので逆に子供の問題を先送りにしているだけになってしまいます。
子供への支援は大きく分けて、学習面、身体面(運動面)、社会面(対人関係など)の3つになるかと思われます。保護者支援もありますが、子供への直接的支援としては、これらの3つになるはずです。
社会面の支援とは、対人スキルの方法、感情コントロール、対人マナー、問題解決力といった、社会で生きていく上でどれも欠かせない能力を身に付けさせること
知的には問題ないが新たな障害を生む
いちど知的には問題ないと判定されてしまえば、それは怠けているだけだ、性格の問題だ、育て方が悪いのでは、と捉えられてしまう
※非行少年達が変わるきっかけになるもの。
①家族のありがたみ、苦しみを知った時
②被害者の視点に立てた時
③将来の目標が決まった時
④信頼できる人と出会えた時
⑤人と話す自信がついたとき
⑥勉強が分かった時
⑦大切な役割を任されたとき
⑧物事に集中できるようになった時
⑨最後まで諦めずにやろうと思った時
⑩集団生活の中で自分の姿に気がついたとき
人が自分の不適切なところをなんとか治したいと考えるときは、適切な自己評価がスタートとなります。
自分が変わるための動機付けには、自分に注意を向け、見つめ直すことが必要
子供の心の扉を開くには、子供自身がはっとする気づきの体験が最も大切であり、我々大人の役割は、説教や叱責などによって無理矢理扉を開けさせることではなく、子供自身にできるだけ多くの気づきの場を提供すること
馬鹿にされ続けてきた少年たちは、自分たちも、人に教えてみたい、人から頼られたい、人から認められたい、といった気持ちを強く持っている
人の役に立つことで自己評価の向上につながり、次第に勉強へのやる気も出てくる
ワーキングメモリを含む認知機能向上への支援として有効なトレーニング。コグトレ(認知機能強化トレーニング)

6.商品の紹介