書評

行政ビジネス

1.今日の一言と本のサマリー

営業しない行政は生き残れない!それは民間の仕事で、行政が手を出すべきではない。このような、伝統的な官民の役割分担論があるのはご存知でしょうか?行政は許認可や規制を行い、補助金を出すもので、民間は商品を作ったり、売り込んだりする、という考え方です。しかしそれだけではもう、地域の課題を解決できないのは明らか。

そんな世の中にあって福井県では面白い取り組みをしています。それは営業部を作ったこと。恐竜博物館や、各企業とのコラボレーションを行い、積極的に営業活動を行っています。民間では当たり前のことが、行政では当たり前ではない。しかしそれではこれからの時代を生き残る事は行政であったとしても難しい。

進化した行政の仕事のあり方についてまとめた一冊。ご紹介していきましょう。

2.岡崎の考察

本書は行政が今後どんな仕事をしていくべきか、そして具体的に福井県はどのような取り組みをしているかを紹介した一冊となります。福井県の取り組みに関して気になる方はぜひ手に取っていただきたいところです。今日はその背景にある理由とやるべき取り組みに関して書評をしていきましょう。

①これからの行政の仕事は何か?
今、自治体を一広く行政に求められているのは、住民や民間企業と一緒になって、地域や社会の活力を生み出し、様々な課題を解決していく事です。そのためには、従来の行政手法やスタイルを革新していかなければならない状況にあります。官から民へという市場主義がある。しかし、市場が決して万能でないことは明らかだ。行政の無駄をなくすというのは当然のことだが、市場に委ねれば全てうまくいくというのは幻想だ。この考え方も官民の二元論にとらわれている。
より重要な事は、行政が持っている様々な知恵、人材、ノーハウ等を引き出し、それを民間企業の手法や経営資源と組み合わせて、新しいコラボレーションのビジネスモデルを作り出すことです。
行政である以上、社会貢献的な要素を排除することができませんが、ビジネス活動として少なくとも最終的には収益につながることを目標に、行政ビジネスを行っていく必要があるでしょう。

②国も自治体もプレイヤーである。
これからの時代は国も自治体も、グローバルマーケットでのプレイヤーであるという自覚を持つ必要があります。とりわけ自治体は、今まで私的領域であるからとして関与したかった分野に、積極的に関わっていく必要があります。
福井県が取り扱っている領域で言えば、就活や、婚活。自治体が出会いの場を作るだけでなく、異性とのコミニケーション能力の向上などについてのアドバイザーによる研修なども行っています。民間に任せるだけという姿勢では県内の人口も減ってしまうのでしょう。

③行政は個々の企業支援をしないというこだわりを捨て、場合によっては地域経済を維持するために支援を行う
福井県を例にとると、他県に比較して製造業が多く、ものづくり企業の占める割合が高いです。そこで、技術開発で徹底した企業支援を行おうと、研究開発から製品化までの一連の活動を一貫して支援する体制を築いています。
民間だけでは難しい技術開発が、行政が取り組むことで可能になることでしょう。

④行政は地域のつながりの力を維持、向上するために必要なことを行う
今までは、行政は住民や企業の財産形成に公費を投入しないという前提がありました。しかし東日本大震災などで、広く被害を受けた方々など、公費を用いて支援する必要が出ています。地域のコミュニティーを守り、仕事や家庭が1日も早く元通りの姿になるよう環境整えていくことが行政の大きな仕事であると言えるでしょう。

⑤官と民の境界線
上記で述べてきたように、社会の変化により官と民はその境界と領域を変えていく必要があります。行政は究極的には、公益と公共性を要件とするものであるが、その中にはビジネスという手法も含まれていると考えることができる。
つまり、行政が、個別の企業の商品を一緒に売り込んだり、行政と企業が一緒にビジネスをしたりするというのが新しい行政のスタイルとなっていくでしょう。民間とともに、同じ方向を向く場面が増えてくる必要があるのです。行政と民間、両者がノーハウ、資金、人材等を出し合うことで、投資の循環と消費や雇用が生まれます。それによって様々な社会的課題を解決し、地域の活力を生み出すことができるでしょう。

具体的な事例が多くビジネスの参考になるものも多かったです。また行政と仕事をしていくという可能性を模索できて、ビジネスに興味がある人にとっては面白い内容だと思います。

3.気になるワード

今、自治体をはじめ広く行政に求められているのは、住民や民間企業と一緒になって、地域や社会の活力を生み出し、様々な課題を解決していくことだろう。そのためには、行政手法やスタイルも日々、確信しなければならない。
行政が営業を行い、ビジネスに関わるというのは、一見突飛なことに感じるかもしれません。しかし、実は、国家レベルではもとより、自治体レベルでも、公私を明確に区分する考え方は必ずしも実態とあっていない。
官と民は、どちらかが主導するものではない。官は官、民は民と割り切るものでもない。他方、単なる既得権益保有者など、戦略なき企業と政府が連携することもありえない。
市場機能の中で、民は徹底して稼ぐための事業戦略を練り、官がそれを戦略的にサポートし、官は、国内雇用の確保に必要な政策を徹底的に打つ、これが官と民の新しい方向性である。
民間企業が市場競争原理に従って提供できるサービスは、行政は手掛けない、ということを一律に当てはめれば簡単に決められると考えることには無理がある。
行政が自ら行為を投入して事業として運営したり、補助金で支えたりするべきではない

4.商品の紹介