書評

人は悪魔に熱狂する 悪と欲望の行動経済学

1.今日の一言と本のサマリー

皆さんはマクドナルドになにを求めますか?数年前にこんなことがありました。

お客様調査を行った結果、
・ヘルシーなサラダが食べたい
・ヘルシーじゃないからマクドナルドには行けません
という意見が出てきました。

そこで、ヘルシーを具現化しつつ、あくまでもマクドナルドらしいサラダとして、サラダマックを開発!お客様の声に応えたこの商品。これは売れるに違いない!!

結果はどうだったか?

残念ながら期待に反してほとんど売れず、あえなく販売終了。なぜこんな結果になってしまったのでしょう。その答えは、世の中の流行に乗って、本心ではなく建前で言っているに過ぎなかったから。

実は背徳感こそ大ヒットのカギ。マクドナルドはその後、ヘルシー路線とは全く逆の、クオーターパウンダーを発売します。従来の2倍以上ものサイズのハンバーガー。結果、大ヒット商品になりました。

時々がっつりしたおいしさを味わいたくなって、背徳感を感じながらも、つい食べてしまうのが、マクドナルドらしい。という事。人間は合理的な行動ばかりをするわけではありません。そうした人間の意思決定の研究をしているのが行動経済学です。合理的でない人間の心理を究明するから、行動経済学は『心理学と経済学』とも呼ばれています。

そんな不合理な人間の行動を分析し、マーケティングに生かすことができる1冊が今日ご紹介する、『人は悪魔に熱狂する悪と欲望の行動経済学』です。ご紹介していきましょう。

2.ポイント3点

幅広い意味の言葉に置き換えれば、煩悩にまみれた姿こそ、本来の人間らしさなのかもしれません。

人間を理屈や損得勘定だけで判断してはいけない

素晴らしい理想だけでは、もう人は納得しない時代なのかもしれません。

3.岡崎の考察

合理的な意思決定には限界がある…本人から見れば、ベストでは無いかもしれないがベターな選択だった、と言える選択も、周囲から見れば、ワーストに近いと言える場合があります。しかし、それは本人が愚かなのではなく、行動経済学的な観点では、バイアス(思い込み)が意思決定をゆがめている可能性があるといいます。

そこで今日はこの書籍の中で印象的だったバイアス(思い込み)をご紹介していきます。
①人間は自分が思っている以上に自分のことがわからない
ダニングクルーガー効果があります。これは、能力の低い人物は自分の能力を過大評価する傾向にあり、逆に能力の高い人物は自身の能力を過小評価する傾向にあるという効果です。
なぜなら、能力が低いゆえに不足を認識できておらず、他者の能力もまた正確に推定できないからです。しかし訓練を積み実力がつき始めると、能力の欠落を認識できるようになります。自分にはできると過大評価していたり、逆に自分にはできないと過小評価してしまっているとき、極力客観的に自分を見る必要があるでしょう。

②意外と人間のクズは愛される
有名な漫画の1つに、カイジがあります。有名な、悪魔的だぁ〜、のカイジです。さてなぜ彼は多くの人に愛されるのでしょうか。その答えに類似性が挙げられます。
類似性とは、環境、容姿、態度など似たもの同士と一緒にいると、心地よさを感じて好意的な人間関係を成立させる傾向のことをいいます。
だから完璧な人よりも、ちょっとだめな人の方が親近感を感じて好きになるのです。むしろ、「この人は自分と同じか、自分よりもだめな人だ」と思わせるような人ほど、強力な愛され力を発揮することもあるといます。

③しいたけ占いが人気のある理由
様々な占いがある中で。しいたけ占いは人気の占いの1つでしょう。毎週月曜日に更新されるしいたけ占いは、ほぼ毎回ソーシャル上でトレンドワード化するほどの人気となっています。なぜここまで人気になっているのか?しいたけ占いの特徴であり最大の強みは、その独特な言葉遣いにあるといいます。

例えば次のような文章です。
・昨日までと違って、今日にしかない発見をすることが得意な人でもあるし、それを喜びにできる素敵な人なのです。
・大げさな話をしたいわけではなくて、2020年のかに座は間違いなく奇跡を起こしていくという流れになっていきます。

きつい表現やネガティブな言葉は一切使わず、あくまで優しい言葉で語り掛けているところが、これだけ人気を集めている理由です。つまり言い方を変えると、自己肯定感が低い人や人々にとって、承認欲求を高めてくれる格好のツールとなっています。承認欲求を満たしてくれるサービスは人気を集めるということでしょう。

このほか様々な事例に基づいて行動経済学を紹介している本書。悪と欲望の経済学と言われるとちょっと怖い感じもしますが読み応えのある素晴らしい本でした。オススメです。

4.気になるワード

合理性では人間の50%しか見えない
幅広い意味の言葉に置き換えれば、煩悩にまみれた姿こそ、本来の人間らしさなのかもしれません。
人はそうした悪にこそ魅力や親しみを感じるだけでなく、ときには熱狂さえする
ヒット商品には必ず悪の顔がある
100%善なる人、モノ、サービスなんかありえない
善悪のどちらの感情も認めることが大事です。
人間はとにかく損をしたくない生き物
サンクコストの誤謬とは、今まで投資したコストが無駄になる恐怖から、これまで行ってきた行為を正当化するために、非合理的な判断を行う状態を指します。
きれいごとだけでは人間を語れません
大ヒット商品は不満から生まれる
先に与える情報が判断をゆがめてしまう
どこに記事を置くかで人間の意思決定や感情は大きく変わってしまう
情緒刺激する商品は売れる
承認欲求というものが人を狂わせる
ものを売るには言葉もまた売らなくてはならない。もっともそれ以上でなければならない。我々は人生を売らなくてはならないのだ
承認を求めて、人間はとことん強欲に堕ちます
何らかの被害が予想される状況に陥っても、正常な日常生活の枠組みの中で解釈してしまい、事実を認めず、都合の悪い情報を無視する傾向。人間は自分の知識にしがみついて、まだ大丈夫だとリスクを過小評価してしまいがち。
自分より相手の方が自己中心的と考えてしまう
選択する自由を奪われて、他人から強制されると、たとえそれが良い提案であっても反発、反抗してしまう
プロセスを検証せず、結論だけを聞いて判断する傾向を結果バイアスと呼んでいます。
差別は消して正当化できませんが、一律に差別はよくないと指摘するだけではなかなか状況が好転していないこともまた事実です。
大人は現状維持が好き
得られるリターンよりも、失うリスクに過剰に反応して変化を望まない
もっと、怒って良いのです。怒こらないから、世の中は何一つ変わらないのです。
建前と本音、つまり表の顔とウラの顔を使い分けるのが大人の世界に特徴的なコミュニケーションです。
バランス理論とは、対人関係において三者以上の存在がある状況において、その三者の関係のバランスを保とうとする傾向
同じ発言でも説得力がある人とない人がいるのは、結局、私たちは行った内容だけでなく、誰が言うかをもとに判断しているから
悪魔的ともいえる説得力の源泉は、成功することにこそある
結局、努力しろ。結果を出せ。この9文字がすべてなのかもしれません。
過去の成功にとらわれがち
怠惰はイノベーションの源である
負けたからクズってことじゃなくて可能性を追わないからクズ
登場人物に親近感を覚えるのは、類似性と呼ばれる心理現象で説明できそうです。
環境、容姿、態度など見た者同士と一緒にいると、心地よさを感じて好意的な人間関係を成立させる
この人は自分と同じか、自分よりもだめな人だと思わせるような人ほど、強力な愛され力を発揮する
一生懸命働く、頑張って勉強するも人間の本質ではありますが、そうした綺麗事は人間の50%でしかありません。
自分の得意な分野の視点でのみ物事を観察してしまう
社会的な強者はむしろ愛されにくい
人間の感情は数字では動きません。具体的なストーリーを見て、頭よりも手足よりも、心が先に動くのです。
2万人という数字よりも、1人のストーリーに焦点を当てた方がその気持ちが動かされた
感情は論理を超越する
嘘臭くないコンテンツに共感し熱狂する人がたくさんいます。
素晴らしい理想だけでは、もう人は納得しない時代なのかもしれません。
私たちはどうも極論が大好きなようです。
情弱はカモにされやすい
怪しい業者に不当に搾取されてないためにも、今日の消費者は一定程度のリテラシーを持っていることが否応なしに必要な時代になっている
嘘も方便という格言こそ、権力者で居続けるために最も必要な才能かもしれません。
主観的な考えを優先し、確率論に基づいた予測を行わない
人間の本質を無視して、私は合理的に判断していると考えると考えると誤謬に陥りやすい
人間は時と場合によっては非合理的な意思決定を行う
人間は記憶も思考も歪んでいる
利益の総量は一定と捉えてしまい、誰かが利益を得れば、その分だけ誰かが損をすると考えてしまう
人間を理屈や損得勘定だけで判断してはいけない
人間は勘定と感情の2つをもとに行動します。

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