書評

徹底的にかみくだいたドラッカーの「マネジメント」「トップマネジメント」

1.今日の一言と紹介する本

今日ご紹介するのは『徹底的にかみくだいたドラッカーの「マネジメント」「トップマネジメント」』です。

それでは、紹介していきます。

2.本のサマリー

ドラッカーはすごいらしいけど、難しくてよくわからない…

そんな人のために、ドラッカー理論のエッセンスをわかりやすく、かつ正しく紹介するために書かれた1冊。ドラッカー理論のエッセンスのポイントさえ抑えれば、読みにくさは半減し、ドラッカー理論が早まるのは間違いありません。

世界中になの知れている経営思想家、ドラッカー。

日本においては残念ながら知名度ほどには理解されていないという現実があります。この本をきっかけにドラッカーについて知ってみてはいかがでしょうか。

ドラッカー研究47年の著者による明快で丁寧なドラッカー理論とは?

3.ポイント3点

マネジメントとは、人の強みを活かして組織の成果につなげることである

人としてどのような貢献をするのかをまず考えよう。
そのためには自分自身の道を明らかにしよう。
そして、それは自分自身の強みを知るところから始まる。

個人の成長を超えて組織が成長する事はない

4.岡崎の考察

日本人なら誰でも知っているドラッカー。

マネジメントの神様などと言われますが、改めてマネジメントとは何かと言われるとよくわからない…という方も多いのではないでしょうか。ドラッカー自身も認めている事ですが、マネジメントは難しい言葉です。なぜ難しいのかと言えば、マネジメントという言葉が多くの意味を含んでいるからです。

そこで今日は、マネジメントとは何か?という観点で書評を行っていきましょう。

マネジメントという言葉は、ときには動詞として、ときには名詞として用いられます。例えばマネジメントするという表現をしたときは動詞として使われています。すなわちそれは、機能、働きを意味しているわけです。

正しく管理を行われている、もしくは成果に対して必要な動きをしている、という意味合いを持って使われています。名詞として用いられる場合は、機能、働きの担い手という意味と理論の体系として意味しています。

このプロジェクトのマネジメントは誰?といった具合です。この場合には責任者や担当者という意味合いになるでしょう。

マネジメントに関わる本を読むときに気をつけなければならない事は、その言葉が動詞であるのか、名詞であるのかということを理解しながら読み解くということになります。

マネジメントとは、人の強みを活かして組織の成果につなげることである。

では人の強みを活かしている状態とは、どういう状態でしょうか。次の4つの観点から強みが生かされていると判断しています。

①マネジメントが組織を組織として機能させるものであること
②人に関わるものであること
③成果志向の考え方であること
④権限の正当性の根拠が示されていること

マネジメントを行う上で重要な事は何か?

ドラッカーが他の組織分析学者達と異なる点は、企業が成功するために何が大切かではなく、世の中が良くなるために企業をどのように成長させていく必要があるか?という観点からマネジメント考えていることがあげられます。

世界中で知られるドラッカーですが、特に日本でドラッカーが好まれるのはこの点でしょう。

個人の利益よりも全体の利益を優先する、1つの企業の利益よりも世の中の利益を優先する。流行ったアドラー心理学でもそうですが、全体を良くしていくことを優先するという考え方が日本によく合っているんだと思います。

ドラッカーのマネジメントの全体像を勉強したい。なかなか難しくて手に取れなかった。そんな方にお勧めの1冊でした。

5.気になるワード

【第1章 ドラッカーの考え方のエッセンスを学ぶ】
ドラッカー自身も認めている事ですが、マネジメントは難しい言葉です。なぜ難しいのかと言えば、マネジメントという言葉が多くの意味を含んでいるからです。
マネジメントという言葉は、ときには動詞として、ときには名詞として用いられます。
動詞として用いられる場合は、機能、働きを意味する。
名詞として用いられる場合は、機能、働きの担い手という意味と理論の体系としての意味をする。
マネジメントは、機能、働きであり、それを担う人であり、その人の地位であり、理論の体系であり、研究の対象でもあります。
マネジメントとは、人の強みを活かして組織の成果につなげることである。
①マネジメントが組織を組織として機能させるものであること
②人に関わるものであること
③成果志向の考え方であること
④権限の正当性の根拠が示されていること
ドラッカーは、現代社会を組織社会と、知識社会という2つの視点で捉えました。
組織社会とは、社会的な課題のほとんどが組織によって解決される社会のことです。地域社会とは、知識が生産手段の中心となる社会のことです。
マネジメントを特定の階層、つまり経営者層だけの特別なものとしては捉えず、すべての人々に開いた万人のものとして捉えました。
人が幸せになれる社会をどのようにして実現できるか
生涯のテーマは自由で機能する社会の実現。自由とは選択する権利を持つことであり、機能する社会とはすべての人々に居場所と役割が与えられる社会のこと。
多くの経営学者が、はじめに企業ありきのスタンスで自らのマネジメント論を展開しているのに対して、ドラッカーは初めに社会ありきのスタンスでそのマネジメント論を展開している
個人と組織は貢献を通じて成長し続けるもの
人としてどのような貢献をするのかをまず考えよう。
そのためには自分自身の道を明らかにしよう。そして、それは自分自身の強みを知るところから始まる。
自らのミッションを意識するために何を持って人々に記憶されたいかを絶えず問い続けよ
人は人の成長を手助けすることによってのみ成長できる
個人の成長を超えて組織が成長する事はない
ポストモダンに集約されるドラッカーの方法論の特徴
①理性(考えること)と感性(感じること)の統合
②有機的システム(生命のあるもの)としての社会観
③多面的理解に基づく人間尊重主義
マネジメント(経営者)とは何かではなく、マネジメント(経営者)の課題とは何かを第一の問いとして、自らのマネジメント論をスタートさせました。
経営者の課題
①組織特有のミッションの実現
②働く人々の自己実現
③社会の問題解決への貢献
企業の目的についての妥当な定義は1つしかなく、それは顧客の創造である
顧客の創造とは、顧客すなわち社会的ニーズを発掘しそれを乱すことによって、より良い社会を実現すること
企業の目的である顧客の創造を達成するために、企業は2つの機能を果たす必要がある。その2つの機能とは、マーケティングとイノベーション
マーケティングについては販売と対比することで理解が深まります。販売は我々の製品からスタートし、我々の市場を探そうとし、我々は何を売りたいのかを考えます。これに対しマーケティングは顧客からスタートし、顧客は何を買いたいかを考えます。
顧客が探し求め、価値を認め、必要とする満足はこれであるとするのがマーケティング
マーケティングと販売は真逆のものであり、マーケティングの理想は販売を不要にすること、つまり、顧客を理解し顧客に製品とサービスを合わせひとりでに売れてしまうようにすること
顧客が今求めているものに対応するマーケティングだけに終始する事は、やがて企業の存続を困難にしていきます。何故かというと、顧客が知り得ない新しい満足や価値を提供することが企業の存続と成長には欠かせないからです。
【第二章 ドラッカーのマネージャー論のエッセンスを学ぶ】
マネージャー(管理者)の定義。組織の成果に責任を持つもの。
マネージャーが取り組むべき2つの課題
①部分の総和以上に大きい真の全体を創造すること
端的に言うと、1 +1 = 2ではなく1 +1 = 3以上にすること。つまり、組織のシナジー効果(相乗効果)を作り出すこと。
②すべての意思決定と行動において近い将来必要なものと遠い将来必要なものを調和させること。
組織全体の相乗効果に配慮しつつ、近い将来と遠い将来の2つの時間軸の中で生き、行動していくのがマネージャーです。
マネージャーの基本業務
①目標設定する
②組織する
③動機付けを行い、コミニュケーションを図る
④評価する
⑤自らを含めた人材を育成する
マネージャーの仕事は人間の育成に関わる仕事であり、その育成の方向が部下の人間としての成長を決定付けます。
マネージャーの仕事は会社の目的と目標達成するために果たすべき課題を競うようにして決めるべきである
マネージャーの仕事の設計ポイント
①企業の成功に目に見える光景をなすもの
②仕事の出来は1で正しく評価ができるもの
③内容と権限をできるだけ幅広くしたもの
④マネージャーの仕事としてふさわしい内容と意味を持つもの
⑤出来る限り大きな責任と調整を伴うもの
マネージャーがやってはいけないこと
①上司を不意打ちしてはならない
②上司の能力に疑問を持ったとしても、上司を低く評価してはならない
自分自身をマネジメントするポイントは自分を知ること
①自分の強みを知る
②自分の仕事のスタイルを知る
③自分の価値観を知る
④自分のあるべき場所を知る
⑤自分のなすべき貢献を知る
自分の強みを知る最も効果的な方法はフィードバック分析です。やるべきことを決めて取り組み始めたら、期待する成果をあらかじめ具体的に書き留めておき、9ヶ月後ないし1年後に実際の成果と比較してみると、自分の得意とするものとその分野や方法がよくわかります。
自分の強みよりも自分の価値観を優先すべき。自分にふさわしくない場所から好条件を示された場合は断るべきだ。
かつては、なすべき貢献は組織が決めてくれました。しかし現代は、なすべき貢献についても自ら決定できなければなりません。
優れたマネージャーの行動習慣
①何をしなければならないかを自問自答する
②我が社にとって正しい事は何かを自問自答する
③アクションプランを策定して実行する
④意思決定に対して責任を持つ
⑤コミュニケーションに責任を負う
⑥問題ではなく機会に焦点を当てる
⑦会議を生産的に進行する
⑧私ではなく、我々を主語にして話す
優れたマネージャーは、まず可能な限り会議の数を減らす努力をします
リーダーシップとは行動であり、責任大、信頼である。
信頼を得るためには、言葉と行動が矛盾なく一致していることが必要です。
ドラッカーの自己目標管理の最も重要なポイントは、セルフコントロールにあります
自己目標管理の基本ステップは、目標設定、プロセスの管理、結果の評価の3つ
コミュニケーションは知覚、期待、要求であり情報ではない
コミュニケーションは期待である。
相手(受け手)が何を期待しているかを理解することが、コミュニケーションを成立させます。
コミュニケーションは要求である。
相手(受け手)に何かを要求することもコミュニケーションである。コミュニケーションは全体の近くであり、情報は部分の理解です。
【第3章ドラッカーのトップマネジメント論のエッセンスを学ぶ】
トップマネジメント(経営者)の仕事は、1人ではなくチームでなされるべき仕事です。
チームの選考基準は、トップと異なる強みを持っている人であり、トップにノーが言える人であり、真摯さを持っている人です。
成長できない企業の原因の多くは、トップがトップマネジメントチームを組織せず、ワンマン体制を続けているところにあります。
トップマネジメントの仕事は少なくとも、思考する人、行動する人、人間味のある人、矢面に立つ人という4つの気質を併せ持つ人間であることが求められます。
トップマネジメントチームがチームとして機能するまでには3年はかかる
トップマネジメントのための5つの問いによる自己評価法
①我々のミッションは何か?
②我々の顧客は誰か?
③顧客にとっての価値は何か?
④我々にとっての成果は何か?
⑤我々の計画は何か?
顧客は自分のニーズを満たし、抱えている問題を解決してくれる企業を評価します。しかし、それ以上に、話を聞いてくれ自分のことを知ろうと努力してくれる企業に価値を置くということに留意する必要があります。顧客からどのようにして学ぶか?を取り続けることがトップマネジメントに強く求められます。
トップマネジメントは、ミッションの実現に向けてのプロセスの中で、常に成果にこだわり続け、意味ある成果を確実なものにするために、何を行うべきかを決定し実行する責任を負っています。
人事考課のポイント
①うまくできた仕事は何か
②それゆえに、うまくできそうな仕事は何か
③強みからもっと大きな成果を得るために何を学び、何を獲得したらよいか
④彼(彼女)のもとで自分の子供を働かせたいと思うか
意思決定の7つのステップ
①必要性の判断
②問題の分類
③問題の明確化
④目的の明確化
⑤決定の三角
⑥決定の実行
⑦結果の検証
そもそもその事柄はすべきことなのかを検討する
問題と思っていることが、実は親の問題によって引き起こされている発生的な問題だったりします。
意思決定によって実現すべき目的を明らかにする。意思決定は関係者全員を巻き込まない限り成果をあげられません。
最初から正しく事実を把握することは困難であり、まず意見からスタートしなければならない。
イノベーションにおいて、なすべきでないこと。
①凝りすぎてはいけない。イノベーションは普通の人が利用できるものでなければならない
②多角化してはならない。イノベーションには集中が必要であり、いちどに多くのことを行おうとして散漫になってはならない
③未来のためにイノベーションを行ってはならない。イノベーションは常に現在のために行わなければならない
成功するイノベーションの条件
①成功するイノベーションは集中を必要とする
②成功するイノベーションは強みを基盤とする
③成功するイノベーションは経済と社会の変革を目的とする
ドラッカーは、ネクスト、ソサエティーで、21世紀末にある新しい社会をネクスト・ソサエティと表現して、トップマネジメントにその対応のための意識の転換の必要性を説いています。
ネクスト・ソサエティの特徴
①高年人口の急増と若年人口の急増により雇用形態が変化する
②若年中心の市場から中高年中心の市場へ変化する
③知識が最も重要な資源となる知識社会の訪れとその担い手としての知識労働者の存在感が増す。
知識社会としてのネクストソサエティの特質
①知識は容易に移動できるため、いかなる境界もない社会となる
②すべての人に教育の機会が与えられるために、望む方向への移動が自由な社会となる
③すべての人が生産手段としての知識を手に入れることができるが、すべての人が勝者となれるわけではないゆえ、成功と失敗の併存する社会となる
変化をマネジメントする最善の方法は、企業自らが変化を創出すること。
チェンジエージェント(変化機関)への返信を遂げるために求められること。
成功していないものは全て組織的に廃棄する
自らの組織をチェンジエージェントに変身させることをより確かなものとするために、トップマネジメント2つの課題に取り組むことが求められています。
①きたるべき変化を知らせてくれる貴重な情報源としてのノンカスタマー(将来の顧客)に着目すること
②知識労働者のマネジメント
知識労働者が重要視していること
①明確な組織のミッションがあり、その実現に向けての自分の役割も明確であること
②あげるべき成果がはっきりしており、その達成が自己実現につながること
③自主的に自己責任で処理できる部分が多い仕事であること
④組織上と経営の方向性について十分な発言権を持つこと
⑤継続学習の機会が与えられ、自分の専門分野について敬意が祓われていること
21世紀を生き抜く企業のトップマネジメントが等しく取り組むべきテーマは、知識労働者の生産性の向上

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