書評

世界を変えたいなら一度”武器”を捨ててしまおう

1.今日の一言と本のサマリー

本日ご紹介する本の著者、奥山先生は、国際政治、国際外交戦略という観点から研究している方です。国際戦略や対外戦略と、人生の目標の立て方にはかなり共通した考え方があるといいます。海外の方と歴史認識ついての議論をする際、日本人は反応できないケースが多く見られます。諸外国からは日本人には核となるアイデンティティがないと思われてしまう始末。

よく日本は外交面で、刺身のツマだとか、金を出すだけの国だとか、大国になられる国だとか言われます。日本が国際政治で舐められているのは、実は日本人に対するこんなイメージに大きく影響されているそうです。

なぜアイデンティティがないと言われるのか?
その理由はビジョン、そしてそれを達成するための戦略がないから。これは人生の目標の立て方とも共通しています。

戦略学を研究する学者が伝える、人生の戦略の立て方とは?

2.ポイント3点

日本が得意なハード作りがこんなになってしまった今、ものづくりに固執していれば、いずれ日本も没落していってしまう

スキルの奴隷にならず、一度すべてのスキルを捨ててしまって、もっと上の視点から目標を立て直すことがどうしても不可欠なのです。

あなたのビジョンの遂行のためには、やはり冷静に、柔軟になって、選択肢を持たなければならないのです。

3.岡崎の考察

戦略や戦術という言葉をよく聞きますが、そもそもこの2つのワードの意味の違いをちゃんと説明できる人は少ないかもしれません。経営やビジネスの現場では、戦略が大事だとか、戦略なき敗北をするなどという言葉が飛び交います。そこで今日は戦略とは何かというところから、本書の核となる部分をご紹介していきたいと思います。

①戦略学的には全く違う戦略と戦術の意味
日本人の多くが戦略と戦術を混同している
例えばビジネスの現場で次のような会話をされることがあります。

・わが社の商品力やサービス力で市場を拡大する
・顧客フォローをすればリピート率が高まる

これらは戦略ではなく戦術です。会社経営における本来の戦略とは、現在ある商品やサービス、資金、社員を使って、他者にどう変わっていくのかを、戦術よりも高い次元で考えること。言い換えるなら、戦術は、他者に勝つために商品力を上げるとか、セールスレターに力を入れるなど武器を磨き上げる事を指します。
それに対して戦略は、武器を磨くのではなく武器をどのように活かして戦いに勝つかを考えることを指します。現実問題として武器を磨くだけでは、戦いに勝つことができないのです。

②生き残るには武器を捨てるしかない
前述した通り、スキルはあくまでも武器に過ぎません。武器はいくら性能の高いものを手に入れたとしても、また新しい武器が開発されます。するとその新しい武器を手に入れるために、またスキルを磨かなければならない。いたちごっこが続くことになります。
生き残るための思考を手に入れて、スキルにのみ頼らない自分を作り上げていかなければならないのです。そのためには、私たちは今まで大事にしていた武器を一度手放す必要があります。今持っている武器ってどのように戦うかを考えるのではなく、戦略を考えてそのために必要な武器を持つことを考えましょう。

③変わるべきは自分自身
何かが起こる原因、それは環境、組織、個人のいずれかに該当します。そして多くの人は問題が起こると環境を変えようとしたり、組織を変えようとします。確かに環境や組織に問題があるかもしれません。
問題は個人の力で環境や組織を変えるという事は難しいということ。それよりも、自分自身に対してもっと戦略的に動いた方が良いでしょう。周りを変えることを変えるのではなく自分自身を変えること。そのために大事な事は抽象度を高くすること。
今の自分のポジションだけで考えるのではなく会社の社長ならと考えてみる。すると個人でだけ考えていたら思いつかなかった行動をとる必要に気づくはずです。周りを変えることを考える前に自分自身を変えることを考えましょう。

④戦略の階層を上げる
戦略と戦術について次のように言い換えることができます。一発勝負の局地戦で相手に勝つために使われるのが戦術で、もっと長い期間にわたって相手よりも自分の優位を勝とうするために大規模なレベルで使われるのが戦略。
つまり戦略とは戦術の上位概念であるということです。そこで戦略の改装についてご紹介しておきます。上に行くほど上位概念ということになります。

世界観…人生観、歴史観、時々感覚、心、ビジョンなど
政策…生き方、政治方針、意志、ポリシーなど
大戦略…人間関係、資源配分、など
軍事戦略…仕事の種類、戦争の書き方など
作戦…仕事の仕方、会戦の勝ち方など
戦術…ツールやテクニックの使い方、戦闘の勝ち方など
技術…ツールやテクニックの獲得、敵兵の殺し方など

可能な限り上の階層から考え、方向性を指し示す必要があるでしょう。

⑤自分自身の抽象度を上げる
戦略の階層を上げるとはすなわち、抽象度を上げるということを意味します。いきなり西上位を目指す事は難しいと思いますから、1つ以上高いレベルを常にイメージすることを心がけましょう。
例えば新入社員で技術を磨くことを必要とされている場合。確かに技術を磨くことが重要でしょうが、課長はそれをどのように使うのか?という考え方を持つようにします。さらにそこから部長の勝ち方は?取締役の勝ち方は?社長の勝ち方は?と1つずつ上げていくと良いでしょう。抽象度を上げていくとスキルレベルを上げるだけでは足らないことに気づくはずです。

鉄鋼王アンドリュー・カーネギーは自分の墓石にこのように示しています。

自分より優秀な人間を使う方法を知る男、ここに眠る

カーネギーは知識がなかったのかもしれませんが、抽象度が高かった事は確かです。ここで言う優秀な人間とは、抽象度が低くスキルレベルが高い人のことを指しているのでしょう。

人生で結果を作っていくために、抽象度を上げたビジョンを描いてみてはいかがでしょうか?

4.気になるワード

戦略学では、技術のようなハード面でいかに勝つかと考える事は、戦術という低いレベルに属するものなのです。
戦略とは何かと簡単に言ってしまえば、自分の思い通りにする、自分の思い通りになるようにコントロールするということです。
日本人は環境に個人を合わせようとします。一方、欧米人は環境を変えようとします。
日本がルール作りで負けているというのは、環境を受け入れることが得意な民族だからです。
日本が得意なハード作りがこんなになってしまった今、ものづくりに固執していれば、いずれ日本も没落していってしまう
欧米社会では生存競争は常識
スキルの奴隷にならず、一度すべてのスキルを捨ててしまって、もっと上の視点から目標を立て直すことがどうしても不可欠なのです。
戦争は、ある国家間の関係によって引き起こされるという環境を原因として起こるというもの、各国の軍隊の意向や状況によって引き起こされるという組織を原因として起こるもの、そして、人間性によって引き起こされるというものの3つです。
私たちがすべての物事を環境、組織、個人、のいずれかで判断しているということになる
あなたもまずあらゆる事象、社会も組織も、今の状況は全て自分の責任だという考え方を維持すべきなのです。
日本人はなぜか手に取れるものはすごく強いのですが、手に取れないようなものに関しては弱いのです。
抽象度が低い性能にこだわり続ければ敗北する
階層の下にある武器のようなハードのものは、一旦捨てる覚悟で臨まないと、そこから上に上がれない
あなたのビジョンの遂行のためには、やはり冷静に、柔軟になって、選択肢を持たなければならないのです。

5.商品の紹介