書評

予定通り進まないプロジェクトの進め方

1.今日の一言と本のサマリー

建築のような造形物を作り上げる活動だけでなく、ルーティンではできない、新しいものを生み出す活動の全てがプロジェクトといえます。

今日の社会は、1億総プロジェクト社会、と帰すべき状況にあります。情報技術が加速度的に進化し、ネットワークとコンピューターが担う領域は広がり続けています。次々とイノベーションが生まれ、考えられないようなスピードで既存ビジネスが崩れていく。ヒット商品を見出と生み出したとしても、あっという間に競合者が登場したり、またはユーザーの気が変わって見向きもされなくなったりして、製品、サービスのライフサイクルはますます短くなっています。

このような社会環境においては、ルーティンワークと呼ばれる仕事は、日々少なくなっています。一方で重要度が高まっているのが、新領域の開拓。新領域の開拓、すなわちプロジェクトをいかに前に進めていくのか。

予定通り進まないプロジェクトの進め方』をご紹介していきます。

2.ポイント3点

プロジェクトを与えられたものとして取り組むよりも、自分のものとして取り組んだ方が成功の可能性が高くなる

プロジェクトを始めるにあたっての最大の問題は、要件定義ができないということです。

プロジェクトにおいて、当初立てた計画に固執する事は、最も愚かなことだ

3.岡崎の考察

まずは1つ次のようなプロジェクトを考えてみましょう。

【プロジェクト】りんごが欲しいから買ってきて
りんごが欲しいから買ってきてという依頼をされたとします。わかりました、買ってきます!と行動しては失敗の元。
このプロジェクトにおいて、まずしなければならないことそれは、情報確認です。
・りんごは1つで良いのでしょうか?
・どこの産地が良いのでしょうか?
・そもそも何に使おうとしてるのでしょうか?
・予算はいくらでしょうか?
等々確認しなければならないことがたくさんあります。

りんごを買うという程度であればそれほど難しくありませんが、仕事におけるプロジェクトで上記のような確認を徹底しているでしょうか。思い込みで行動してしまった結果、大きなミスを犯してしまう。そんな現実はよくあることです。そこで我々がプロジェクトを行う上で、やらなければならない事は言葉の交通整理です。

【言葉の交通整理をする】
要望、要求、要件、仕様、設計。
プロジェクトにおいてはこうした別々の階層による話が、ごちゃまぜになって始まり、互いに影響与えながら進むものです。それぞれの言葉を意識して整理して使うようにしましょう。

①要望…プロジェクトを開始する根本となる時
どんなプロジェクトも、要望がない所には始まることがありません。なりたい結果を明確にしましょう。
②要求…要望を下にして、正式に依頼する側とされる側の間で明示される情報
依頼をする側とされる側の間に、きちんと要求として提起していないことを当たり前として相手に求めるのは、後々の認識相違やトラブルの元になります。仕事においては法的な問題にも発展しかねませんから、必ず要求をすり合わせ、共通の約束とする必要があるでしょう。
③要件…要求を叶えるために、製造、実現する内容を明確にすること
いわゆる要件定義をしておきましょう。何が欲しいかと、どう作るかの境界線です。このページの精度が低いと、着手した後の、戻り、影響範囲が甚大なものになってしまいます。
④仕様…製造するものに要求する形状、構造、寸法、制度、性能、製造、試験方法等の規定
使用を規定するにあたって気をつけなければならないことがあります。それは依頼者が端要望が、依頼されている仕様と一致しないケースです。依頼する側と受ける側に認識の齟齬が生まれていないか確認しましょう。
⑤設計…仕上がりの形や構造図面などによって具体的に表現すること
何を設計すべきかが正しければ、最高の仕事をすることができます。しかし初めから完璧にする事は難しいでしょう。まずは設計してみて、作ってみて、動かしてみて、そこからもう一度、何が要件だったのかを考え直す。この作業を繰り返し仕事のクオリティーを上げましょう。

さて、言葉を整理したところで、もう1つ押さえておきたいのが、プロジェクトにおける3つの法則です。次の3つの法則を抑えてプロジェクトを進めましょう。

法則①やったことのない仕事の勝利条件は、事前に決められない
家を建てるなどわかりやすいプロジェクトなら、勝利条件は家が立つことでしょう。もちろん希望の。しかし実際の仕事におけるプロジェクトは、従業員満足度を向上させる、地域社会に貢献するなど、定性的で勝利条件が曖昧なものもあります。進めていく中で何を勝利条件にすべきかを柔軟に変更させる必要もあります。

②プロジェクトにおいては、一生懸命考えて立案した施策が、想定を超えた結果をもたらす
ここで言う想定を超えた結果、とは、良い結果も、悪い結果も両方を指します。つまり、想定外は起きて当たり前ということ。なぜなら定石通りに行っても、思わぬトラブルはプロジェクトにつきものだからです。想定外のことが起こるのが当たり前、想定を超えた結果が発生した際に冷静に対処する、その判断力が重要でしょう。

③プロジェクトの過程における諸施策の結果もたらされる状況は…
即座に次の局面における制約条件となり、時にプロジェクトの勝利条件そのものの変更すらも要求する。人生万事塞翁が馬、という言葉もありますが、プロジェクトはまさにこの言葉そのもの。
コロコロと状況が変わり、目の前の問題解決をしたら、それが次の邪魔になってしまうということも多々あります。状況の変化に柔軟に対応する必要があるでしょう。プロジェクトにおける想定外とは、あってしかるべきものとあってはならないもの、この2つの軸でとらえることができます。

様々な状況が起こりうるプロジェクト。そのプロジェクトをどのように進めれば良いのかに悩んでいる方、参考になる一冊だと思います。

4.気になるワード

プロジェクトとは、独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施する長期性のある業務
ルーティンワークでない仕事は全てプロジェクトであり、社会的活動は全てプロジェクトだ
想定外は当たり前
そもそも計画を立てている段階で、あらかじめ情報が充足しているという事はありません
プロジェクトにおいて、当初立てた計画に固執する事は、最も愚かなことだ
もしあなたが新商品開発のプロジェクトマネージャーだったら、そこで戦わなければならない最大の道とは、顧客の要求が明確に見えないということです。
人は先のことを見ようとせずに、目の前のタスクのことに終始する、木を見て森を見ずの行動、あるいは辺り構わずマウンティングの行動をとってしまいがちです。これらの行動は、プロジェクトそのものの空中分解につながりかねません。
プロジェクトを始めるにあたっての最大の問題は、要件定義ができないということです。
物事は大きな視点からその全体観をつかんで、その後、個別の作業に取り掛からなければなりません。
プロジェクトに取り組むにあたって、大局観という言葉を大きな支えになるものです。
問題解決をする上で最低限考えなくてはならない3つの要素
1.目標
2.状態
3.手段
プロジェクトを与えられたものとして取り組むよりも、自分のものとして取り組んだ方が成功の可能性が高くなる
最悪のシナリオを描くことができなかったのが、第一局面における問題だった
そもそも人は、想定した範疇のことでなければ対処ができないもの
自分ではなかなか変更できない、中止できない。何を切り捨て(あきらめ)、どのように施策や中間目的を変更するか、といったことを知るには、自分以外の誰かに状況確認してもらうことが1番です。

5.商品の紹介