書評

シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成

1.今日の一言と本のサマリー

どうしても時間がかかる仕事ってありますよね。

いろいろな本を書評させてもらってますが、本の中にもすぐ書評がかけるものと、なかなか書き出せないものがあります。

今日ご紹介する書籍、『シン・ニホン 』もそんな書籍の中の1つ。

結論から言えば、いわゆる論文。様々な事例を紹介した上で、著者の主張を伝えています。単なる悲観論、それは逃げだ。自分たちが未来も生き続けること、自分たちが次の世代に未来を残す存在であることを無視している。

暗いニュースが多い昨今ですが、いかに未来の日本を作っていくのか。慶應義塾大学教授であり、Yahoo!株式会社CSOである安宅先生が描く日本の未来とは?

2.ポイント3点

大切なのは自らハンドルを握り、どうしたら希望の持てる未来になるのかを考え、できることから仕掛けていくことだ。

そもそも人づくりとあらゆる国力の元となる科学&技術開発の力が最も大切なアジェンダでないような国や企業に未来などない事は、冷静に考えれば明らかだ

AIのサポートがあることと、知識の必要性は全く別だ。むしろ情報処理のスピードが抜群、各自が知覚できる領域を拡張し、そのために理解できることが望ましい領域も広がっていく可能性が高い。よく希望的観測ととも言われる、AIがあれば知識は必要なくなるという話と真逆だと言える。

3.岡崎の考察

わが国は半ば1人負け、もしくはゲームが始まったことに気づいていない
世界のGDP推移を見たときに、日本は約25年間伸びていない状態が続いています。さらに一人当たりの生産数の実数で見ると、世界は一気に生産性が高まってきたのに対し、日本だけは大きく伸ばすことができていません。特にこの15年間は日本の1人負けと言って良い状態です。

未来は目指すものであり、創るもの。生き残るのは最も強い種ではなく、最も変化に対応できる種だ。そして1番良いのは、未来を自ら生み出すことだ。
しかしここまで日本は1人負けだったからと言ってこれからも負け続けるということではありません。悲観的な未来予想もありますが、残念ながら未来予想は当たりません。未来を予想するのではなく、自分で作り出したい未来を考えていく。その方がずっと生産的でしょう。

高等教育を受けたはずの人が基本的なサバイバルスキルを身に付けていない。
日本の国力を上げるために求められることの一つは各人の能力アップでしょう。現在の日本人が欠けている能力は次の5つだといいます。

①基本的な問題解決能力の欠落
②数字扱う基本の欠落
③分析の基本ができていない
④基礎的な統計的素養がない
⑤情報処理、プログラミングについての基本的な理解がない

これらを学ぶためにかける自己投資の金額も先進諸国でもっとも低いことも問題の一つと提唱しています。それでは安宅先生が描く未来像とは?その一部に「風の谷を創るプロジェクト」があります。そのプロジェクトをご紹介します。

①風の谷という希望
宮崎駿監督の風の谷のナウシカはご存知の方が多いでしょう。人類や生命体にとっては毒まみれの極めて危険な空間になった未来。しかし風の谷では1つの小さなコミュニティーの中で、全てをまかない、再生可能なエネルギーによって生活を行っています。つまり自然と共に豊かに、人間らしく暮らすことができている空間であるといえます。

②風の谷を創るプロジェクト
経済とテクノロジーが発展した今、われわれは機能的な社会を作り上げることに成功しました。しかし自然との隔たりがある世界に住むようになり、人間らしい暮らしが流れつつあります。これは現在生きる我々の幸福だけの問題ではなく、これからの世代にとっての素敵な未来を作るための課題でもあります。風の谷を創るプロジェクトは、テクノロジーの力を使い倒し、自然とともに人間らしく豊かな暮らしを実現するための行動プロジェクトです。

③風の谷はどんなところか?
良いコミュニティーである以前に、良い場所であることが大切です。結果的にコミュニティが生まれるだけ。人間が自然と共存する場所であり、そのために最新のテクノロジーを使い倒すこと。風の谷は高い建物も高速道路も目に入らない。自然が主役である世界です。

④風の谷を創ることの価値
風の谷を創るプロジェクトは、美しく自然豊かな空間であるだけを目指すような話ではないです。このプロジェクトでやろうとしているのは、地方都市も介在することがない、特に維持が不可能になりつつある空間を、逆に真に価値のある場所にするにはどうしたらいいのかという運動です。

いまのまま街が発展すれば、都市型の未来しか選択肢がなくなり、都市がコモディティー化する事はほぼ確実です。風の谷のような価値が生まれれば、都市にとっても、また国というコミュニティー全体にとっても、大きな意義があるでしょう。なぜなら生き方の選択の幅が広がり、人間らしさを発揮できる可能性が高まるからです。

この書籍のコアメッセージとなるものは、未来は待つものではなく作るものということになるでしょう。技術革新が進む中で、皆さんはどんな未来を描きますか?

4.気になるワード

大切なのは自らハンドルを握り、どうしたら希望の持てる未来になるのかを考え、できることから仕掛けていくことだ。
手なりの未来が受け入れがたい時、それをそのまま待つのは負けだ。人間の持つ、おかしな未来が来ることを予測する力は、予測される未来を引き起こさないためにある。
もうそろそろ、人に未来を聞くのはやめよう。そしてどんな社会を僕らが作り、起こすのか、考えて仕掛けていこう。
未来は目指し、創るものだ。
情報の識別、予測、目的が明確な活動の実行過程はことごとく自動化していく
データ× AIの世界ではすべての変化が指数関数的に起きる。5年、10年で2倍という変化でなく、一桁二桁が変わるということだ。結果、現在の不可能なことの多くは5年後、10年後には可能になる。
ディープラーニングは何でも使えるAIだとよく誤解されている。これは残念ながら2つの意味で間違っている。
何にでも使えるAIになるものを作る事は今のところできる見込みは無い
変わらない産業があると思う方が無理がある。
戦略レベルでは、情報が生々しく可視化されてくるため、意思決定の質が上がる
江戸時代の呉服屋が、あそこのお嬢さんがそろそろ向こうらしいという話を聞いてきて提案をそろそろと言っていたように、データを持っている人と必要な人、あるいは持っている人同士は、繋がらなければ価値を生まないことが多い。
何もかもをブラックボックス化して作ることで競争優位、競合の参入障壁を築く時代は終わりつつある。
人間は合理性を求める一方で、人の温かみ、人をつうじた価値を大切にする生き物だ。
妄想し、形にすることが止めに直結する時代
未来=夢× 20 ×デザイン
わが国は半ば1人負け、もしくはゲームが始まったことに気づいていない
日本の大半の産業はやるべきことをやっていないだけで、まだ着手できていない宿題がたくさんある
才能というのは確率的に生まれ、現れるものだ。
生まれと育ちの掛け算
リーダー層に女性が極端に少ないことも大きな課題だ
シニア層の活躍には大いなるポテンシャルがある
15歳以上65歳未満の人の数を生産年齢人口というが、これは小泉進次郎氏がかねがね指摘している通り、かなりピンボケした定義だ。
日本は人余りで、人不足という奇妙な状況が続いている。
日本は経済規模に比して歴然と人材投資をしていないことが明らかになっている。
日本の若者たちが持つべき武器を持たずに戦場に出ている
高等教育を受けたはずの人が基本的なサバイバルスキルを身に付けていない
①基本的な問題解決能力の欠落
②数字のハンドリングの基本が欠落
③分析の基本ができていない
④基礎的な統計的素養がない
⑤情報処理、プログラミングについての基本的な理解がない
確かに今の日本はいけていない。美術革新や産業革新の新しい波は日を起こせず、あることすらできなかった。
人類はこれらを解き放つために新しいテクノロジーの多くを手に入れた。後はやればいいのだ。
この国はスクラップアンドビルドでのし上がってきた。今度も立ち上がれる。
若い才能が挑戦するところから作業が生まれる
僕を含めミドル、マネジメント層は、いい年をして坂本龍馬を目指すのではなく、こういう挑戦をサポートし、励まし、金を出し、必要な人をつなぐという、勝海舟的なロールを担うべきだ。
0to1が価値創造の中心になる世界においては、単なる技術獲得だけではなく、夢を描く力、すなわち妄想力と、それを形にする力としての魅力とデザイン力がカギ
骨太でなければ、骨を鍛えなければ、ちっとも強くないんです。
人の良いところだけを、集めれば強くなれるなんて、錯覚も甚だしい。そんな虫のいい話があるわけないでしょう。
いい人を育てるのは何よりも良い仕事をすることが大切ではあるが、スキル刷新も含まれる。
これからは誰もが目指すことで1番になる人よりも、あまり多くの人が目指さない領域あるいはアイデアで何かを仕掛ける人が、圧倒的に重要になる。
一言で言えばこれからの未来の鍵になるのは普通の人とは明らかに違う異人だ。
若い人のサバイバルについても1つ残しておこう。
僕の座右の銘の1つに狭き門より入れという有名な聖書の語句がある。
狭き門より、入れ。滅びに至る文は大きく、その道は広い。
仕事とは他の人に評価される活動のことであり、その人の存在意義の視点で見れば、価値を見出せる事は出掛けない日よりもはるかに大切だからだ。
もう一つ大切なのは人としての魅力の育成だ
人間社会で成功するかどうか、面白いことを仕掛けられるかどうかのかなりの部分は、運、根気、勘、そしてその人の魅力、すなわちチャームだ。
1人であろうとなかろうと、チャーミングでない人が、人として愛され、人から信頼を得、成功することは難しい。
やばい未来を仕掛ける担い手として若者が本当に重要だ
すでにできた社会を回す人と未来をゼロから生み出すとは全く違う。
知覚とは端的に言えば、対象の意味を理解することである。知覚は経験から生まれる。
本物の課題解決にAIは無力
AIのサポートがあることと、知識の必要性は全く別だ。むしろ情報処理のスピードが抜群、各自が知覚できる領域を拡張し、そのために理解できることが望ましい領域も広がっていく可能性が高い。よく希望的観測ととも言われる、AIがあれば知識は必要なくなるという話と真逆だと言える。
本を繰り返し読むだけで何かを身に付けようと言っている人が失敗する最大の理由もこの時点の不在だ。
データ× AI的な力を解き放ってあげる、人間らしく、豊かな自覚を持ち、豊かな課題解決を行いたいなら、できるだけ多くファーストハンドな経験を積むべきである。そして、様々なことを直接感じ、考え抜く経験を幅広く持ってきた。それが全て次の経験の質を高め、自分なりの価値創造の力を本質的に深めていくことになる。
理解しようとする領域を狭める事は避けつつも、まずは1つでもいいから半ば変態的にこだわる領域を見つけることが、深い知覚を持つ領域を生み出す近道なのではないだろうか。
気づきは自分の中にある何らかの意識や理解が、異なる何かとつながることだ。
気づきの量は人の成長そのものということもできる
膨大な知識を細部まで知っているであるとか、決まりを正しく理解し、そつなくちゃんとやる系の、本質的にはAIの方が得意な力を鍛えることにはさして意味がない時代に僕らは突入している。
これからの時代はむしろ、データ× AIの持つ力を解き放てること、その上でその人なりに何をどのように感じ、判断し、自分の言葉で人に伝えられるかが大切だ。
その人になるのは、生々しい知的、人的経験、その上での多面的かつ重層的な施策に基づく、その人なりに価値を感じる力、すなわち近くの深さと豊かさだ。
AI ×データ時代においてワイルドに未来に向けて仕掛けていくためには、まずリテラシー層、専門家層、リーダー層の3層の人づくりが必要となる
その人なりの心のベクトルを育てることが教育の最大命題の1つであることを強く認識し、その視点で教育過程を全てを刷新、再構成すべきだ。
第一に、何を教えるにしても作業内容ではなく、意味、目的を主として教える。
社会に行き、若者が未来を作っていくために、人間の物語を理解しておくことが大切だ。
圧倒的に足りない科学技術予算
そもそも人づくりとあらゆる国力の元となる科学&技術開発の力が最も大切なアジェンダでないような国や企業に未来などない事は、冷静に考えれば明らかだ
老人を生かさんがために、若者を犠牲にするような国に未来はない
人生の長さと社会保障システムの前提が変わってしまったのだから、国というコミュニティー全体で補正しよう
未来は目指すものであり、創るもの
生き残るのは最も強い種ではなく、最も変化に対応できる種だ。そして1番良いのは、未来を自ら生み出すことだ。
完全な予測は不可能
人口減少が悪という議論はもはや基礎となる全体が崩れてしまっている
人口が減るのが無条件に問題だという議論を止め、単なる調整局面としてしばらくは見守るべき

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