書評

誰も見ていない 書斎の松本清張

1.今日の一言と本のサマリー

日本文学の巨人と言えば誰でしょうか?

数多くの文豪がいる中でその1人に松本清張先生が入るのは当然の事でしょう。推理小説やノンフィクション、歴史小説、近代史、古代史などその作品は多岐に渡っています。

そんな松本清張先生の編集をした方がいます。その人物こそ、櫻井先生です。今だからこそ語れる松本清張先生の奇跡。最初の担当編集者が見た大作家の素顔とは?

2.岡崎の考察

恥ずかしい話ですが、松本清張という名前は知っていても、松本清張先生がどんな作品を描いていたのか、どんな人物像だったのかについては全く知っていませんでした。

本書の巻末には主な小説作品リストが記載されていますが、ページいっぱいに記載されたものが18ページも羅列されています。これだけで数を数える気がなくなりました(笑)櫻井先生だけが知っている松本清張先生の素顔。ビジネス書というよりも、歴史をひもとく一冊という感じですがとても面白かったです。この中から3つ面白かったエピソードをご紹介したいと思います。

①櫻井先生は一体どうやって松本清張先生の担当編集になったのか?
運命のいたずらで出版社に入社することになり、娯楽雑誌を企画することに。さて誰に記事を書いてもらうか?という最初の編集会議で、「松本清張さんと五味康祐さんに書いていただきたいと思います」と回答したそうです。

この時会議室は爆笑の渦。なぜなら、純文学作家が、娯楽誌に作品を載せるなど当時は考えられなかったからだといいます。ところが凄いのはここから。当時の編集長から、「新人に、最初からやめておけ、というのはいけない。とりあえず、櫻井くんに当たってもらうのはどうか?」という一言から1通の手紙を書き、なんとそこからまず会いたいということで返信が来たといいます。最初からできないと判断せず、まずは挑戦してみる事が大事ですね。

②男と男の約束
男と男の約束という言葉がありますが、松本清張先生との約束は、1つのことを始めたら、40年間続ける、というものだったそうです。なんと櫻井先生はこの約束を守るため、編集者を辞めてから55歳で独立。それから書き始め、作家としての定年は95歳としているそうです。男と男の約束ってかっこいいですね。

③遊びの嫌悪
松本清張先生ほど、働き者であった作家はいないといいます。まず期限は必ず守る。当時の作家と言えば、期限が遅れて当たり前だったにもかかわらず、松本清張先生はどんなに忙しい時も必ず期限を守った仕事をしたそうです。
1日13時間を、机の前に座れ。そうすれば、必ず、良いものが書けるようになる。ここまで仕事に熱中できる人も多くないでしょう。だからこそ遊びへの嫌悪感は強かったそうです。麻雀や銀座遊び、骨董品集めなど、周りの作家は色々と遊んでいたところを仕事に費やした作家だったといいます。
ここまで費やしたからこそ膨大な作品を世に生み出すことができたのでしょう。このほか担当編集者でなければ知り得ない、松本清張先生の素顔がたくさん紹介された1冊。

作家について知りたいと思う方、ぜひ読んでみて下さい

3.気になるワード

どの作家の場合も、こういった相手が喜びそうなことを考えて、話題にしていく。
作家が批判、批評を嫌がるようになったら、必ず売れなくなる。批判には必ずその原因が潜んでいるもの
いつでも、いま自分は歴史の中にいると思いなさい
面白いものを作り、より多く売る
努力が好きだったという言葉こそ、松本清張の一生を表していた。
1日13時間を、机の前に座れ。そうすれば、必ず、良いものが書けるようになる
人間というのは誰でもそうだが、若いうち、あるいは経験不足の頃は、自信より不安の方が大きい

4.商品の紹介