書評

成城石井 世界の果てまで、買い付けに。

1.今日の一言と本のサマリー

急な質問ですが、皆さんは本当のきゅうりを食べたことがありますか?

急に何を言い出すかという感じですが、面白い話を聞きました。一般に出回っているきゅうりは、接ぎ木をすることで作られています。接ぎ木とは、2つ以上の植物体を、人為的に作った切断面で接着して、1つの個体にするという方法です。

現在世の中に出回っているきゅうりのほとんどは、きゅうりとかぼちゃを合体させたもの。きゅうりはかぼちゃに接ぎ木することが多いそうです。だからかぼちゃの特性がきゅうりに出てしまう。今のきゅうりは皮がちょっと厚めで、中がぎゅっとしているのはかぼちゃの影響を受けているといいます。

本当においしいものは世に出回りにくい。こんな現実に挑戦し大ヒットしているスーパーがあります。皆さんご存知の成城石井。

今日はその成城石井のこだわりを紹介しまくった1冊『世界の果てまで、買い付けに。』をご紹介します。

2.ポイント3点

失敗を失敗と思わない。これはだめですね。

大事な事は、キーマンを見つけることなんです。そうでないと話が前に進まない。

やっぱり、おいしいものを食べていただきたいんです。だから、無理をして売ったりはしません。

3.岡崎の考察

スーパー冬の時代と言われているそうですが、そんな中で業績が好調な成城石井。関東、中部、関西に約180の店舗を展開。さらにこの10年で店舗数は3倍になり、年商は2倍になっているとか。

なぜここまで業績が良いのか?それはひとえに商品への徹底したこだわりと、品揃えの多さでしょう。数多くのヒット商品がどのように生み出されたのか?今日はいくつかエピソードをご紹介するという形で書評にしたいと思います。

①日本のスーパーが中東のドバイに買い付けに行く理由
成城石井は間に商社を挟んだりする事は基本的にないといいます。中間マージンを避けるためです。そんな中わざわざなぜドバイに仕入れに行くのか?ドバイは宗教上お酒を飲むことがありません。そうすると、ノンアルコールの飲料にとても良いものがあったりするそうです。
さらには豆文化ですから、日本ではちょっとお目にかかれない豆に出会えたりもする。ドバイから日本に輸入されているものがまだ少ないということも魅力だといいます。良いものを提供するというこだわりが世界の果てまで足を運ばせている、という事のようです。

②日本に輸入したいと、足掛け3年粘る
成城石井の人気商品の1つに、パルミジャーノがあります。24ヶ月熟成させたチーズ。パルミジャーノ自体は珍しくありませんが、成城石井には他にはないこだわりが。ジャージー牛乳と呼ばれる、普通には流通していない牛乳を使用。濃厚な牛乳で美味しそうですが、ジャージー牛乳は通常の牛から取れる牛乳の3分の2程度しか取れないといいます。だから当然高い。
この特殊なミルクを使ったパルミジャーノ。作り手もかなりのこだわりがあり、売ってくださいと言ってすぐに売ってくれるものではなかったそうです。なんと3年も通ってやっと契約をしてくれたといいます。良いものを届けるための執念を感じるエピソードでした。

③日本酒が置かれている所は蛍光灯が消えている
成城石井のお酒売り場に行くとわかりますが、冷蔵庫がずらりと並んでいる中で、日本酒が置かれているところだけ上の傾向が消えています。通常のスーパーの冷蔵コーナーで、こんな光景を見る事はありません。もちろんちゃんとした理由があります。
酒担当のバイヤーはこう言います。日本酒はワイン以上にデリケートなんです。ワインよりも、もっと低音で管理しなければなりませんし、もっと繊細に扱わないといけないんです。このこだわりには、売り場に訪れた日本酒の酒元が感激してくれたといいます。

④納豆へのこだわり
リーマン食後、デフレが騒がれていた時代。スーパーでも安いものが求められるようになり、納豆も3パック100円など驚異的な価格の商品が登場するようになりました。ちなみに通常3パック100円で納豆を作ろうとすると、どうやっても赤字になってしまうそうです。だからどうするのか?
原材料である大豆を、国産から輸入に、そしてより小粒に切り替えたといいます。未成熟である小粒の輸入大豆は苦味が強く、納豆の味が落ちます。そこで当たり前になったのがタレの同封です。化学調味料がたっぷり入ったタレ。これがあれば輸入大豆の苦味は感じられなくなるそうです。
そこで、本物の納豆を届けたい、という思いから豆からこだわって作られたのが成城石井の『北海道産大豆100%納豆
大豆は、昼夜の寒暖の差があるところのほうがおいしいといいます。だからこその北海道。納豆好きにはたまらないエピソードでした。

徹底して細部にこだわって良いものを届けている成城石井。商売で大事なことに気付かせてもらうことができました。気になる方はぜひ読んでみてください。

4.気になるワード

物事には、必ず原因がある。売れているのにも、理由があるのだ。
成城石井が間に商社を挟んだりする事は基本的に無い。中間マージンが発生してしまうからだ。
おいしいことに加えて、いろんな付加価値をつけたものをバイイングしたり、商品開発していかないと、今はニーズに応えられない
大事な事は、キーマンを見つけることなんです。そうでないと話が前に進まない。
成城石井は、自分たちが求めるこだわりの商品を世界中に追い求めているが、満足いくものがどうしても見つからないことがある。だったら、自分たちで作ってしまおう、という考え
良いものをお求めいただきやすく
本当に良いものって、世の中に出回らないこともあるんですね。それを見つけ出すには、生産者さんから見つけるしかない
やっぱり、おいしいものを食べていただきたいんです。だから、無理をして売ったりはしません。
世に出回りにくい、本当においしいものを届けたい
成城石井のバイヤーたちが見つめているのは、単においしいものではない。本物かどうか、という所にもこだわりを持つ。
新サツマイモが夏場に出てきたりするんですが、サツマイモは新とか、とれたてといった言葉に惹かれるのは進めませんね。甘くないんです
現地で売られているものをそのまま使うのではなく、日本のお客様に合わせ、アレンジをきかせて、ワンランク上の商品に仕上げる
成城石井では、原(社長)がOKしていないものが、店頭に並ぶ事はまずない。
万人受けするけれども特徴がないものは作りたくなかった
おいしいものには、ストーリーが必ずある
バイヤーがやってはいけないのは、負けを認めないこと
失敗を失敗と思わない。これはだめですね。
実際には、安ければ売れるわけではない

5.商品の紹介